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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その101

見えないものに注目する

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 前号のグーグルの面接試験問題は、一見して面食らってしまうような、わけのわからない問題にみえましたが、その裏にはしっかりした背景、インターネットシステムそのものの仕組みが秘められていました。
 たとえその仕組みについてはよく知らなかったとしても、パソコンやスマートフォンを通して今日では誰もが、それなくしては生活していけないくらいにまで日常生活の中に溶け込んでしまっているインターネットですが、今から14、15年前の2000年前後、日本ではようやく一般にもインターネットという名前が知れわたり始めた黎明期でした。
当時のソフトバンク社長・孫氏
 だから、インターネットという「モノ」があって、それを買えば使えると思ったそのころのお客さんが電気店にきて、「インターネットをください」と注文をしたという話が残っていますが、そんな中でアナリストやインターネットをよく知っていた専門家でも、今日の普及は想像できなかったようで、そのことに対して当時のソフトバンク社長・孫氏が憤慨して語っている内容に今昔を感じます。
 そのときの様子と、今日を見事に予見している孫氏の先を見る嗅覚など面白い内容なので、それを巻末に掲載しておきます。

 さて、今号の設問はどうでしょうか。それでは解説に移ります。

問題 設問101    ここに、形も大きさも外見はまったく同じ円柱形の鉄が2本あります。1本は永久磁石で、もう1本は磁石に吸いつけられるが、それ自体は永久磁石ではない、いわゆる磁性を持たない鉄です。道具は一切使わないで、どちらが永久磁石なのかを見分けるにはどうしたらいいでしょう。

棒磁石と鉄の棒

 この設問は、これまで多くみられた論理思考が要求されている問題でもなければ、思考過程や創造的問題解決能力を見ようとしている問題でもなく、また落とし穴が仕込まれているような問題とは無縁の、はっきりとした物理の問題のようです。

 しかし試験問題に出されるくらいですから、単にステップを踏んで順々にやっていけば、解に辿り着けるといった単純な問題でもないはずで、問題の中のどこかに、大いなる工夫がなければ解けないような点が含まれているはずです。
 その問題点とは、手がかりになるようなものが残されていない密室殺人の推理のようで、どちらかを見分けることに役立つような道具をいっさい使わないで、外見上まったく見分けのつかない2つの異なる磁石を見破らなければならないことです。

U字型磁石

 磁石にはN極とS極があり、もしも両者とも磁石ならば、違う極同士はくっつき、同じ極同士ならば反発し合いますが、しかしこの設問のように、一方がただの鉄の場合は、極に関係なく、どちらか一方の筒棒の端をもう一方の筒棒の端に近づければ、必ずくっつくだけですから見分けることはできません。

 では反発し合う点を考えて何かできないか・・・といっても、その場合何らかの方法で、ただの鉄を磁化しなければなりません。
 しかし、そもそもどちらがただの鉄なのかわからないから、それを判別せよと言っている設問なのに、このような考え方は本末転倒です。

 さて、ここで名刑事のコロンボならば気付くはずです。
「すべてがまったく同じなら、両者はどのようなやり方を取っても、それらを区別することはまったく不可能と思われるが、それでも事件は解決する、つまりの設問には正解があると言っている」と。
 そこで気づきます。その突破口は設問自体にあることに!

 それは、違うものを見つけろ、と言っているその設問の設定の中で、一方は永久磁石で、もう一方は磁性をもたないただの鉄だと、すでにその違いに言及していることです。
 いまさら何を改めて言っているんだ! 同じことを言っているだけではないか!と、お叱りを受けそうですが、ここが大事なポイントで、区別ができるとしたらこの違いからですよ、と設問が明かしているということです。
 要は、永久磁石と磁性をもたないただの鉄との違いに焦点を当て、徹底的にそこにメスを入れて考えなさい、そうすれば解けますよ、と言っているということです。

 では、この両者の違う部分だけを見ることにして、その違いは何か。ここに来て初めて、次のような大きな手がかりへと進むことができるということです。
 う〜ん、外見上からはその違いはまったくわからない・・・。それでは目に見えないところでしか、区別することができないではなか! あっ、そうか! つまり、目には見えないところの違いでわかる、ということなのか、と。

磁界と磁力線

 そこで考えます。この両者で目に見えない違いとは何か。
そうです。磁力の有無です。それが目に見える形で表現されているのが、磁石の絵でよく見かける、N極からS極に向かうあの磁力線の磁界図です。
 だがこの問題の場合、磁力の有無といっても、そこから何がわかるのか。実は、ここがこの設問の求めているポイントで、頭の働かせどころなのです。

 たしかに道具も使わず目に見えないものを認知することはできません。認知できるのは、あくまでも目に見える形で出ている現象だけです。そこで設問の場合の現象とは何か。それはくっつくか、くっつかないかだけです。
 そこで目に見えない磁力とこの現象とをしばしの間熟考すれば、パッとひらめくことがあるのではないでしょうか。
 もしも磁力で中立になるところがあれば、くっつかない
と。

くっつくときと、くっつかないときの磁力線

 そこはどこか。そうです。設問のような棒状の磁石ならば、そこは両極の力が打ち消し合う中央部で、そこでは磁力が発生しません。ここまでわかれば、あとはどちらか一方の円柱鉄の中央部に、もう一方の円柱鉄を近づけることによって、どちらが磁石でどちらがただの鉄かの判別が簡単にわかります。
 つまり図1のように、これらAとBの2つの円筒鉄でT字型を作って、互いにくっつけばBが永久磁石、くっつかないならAが永久磁石ということです。

図1

 日常生活で磁石や磁化したものを考えますと、方位計や壁などに留める紙留め用のマグネットのようなものをすぐ思い浮かべることができますが、実はその貢献分野にはものすごいものがあります。
 古くはカセットテープやビデオテープがありましたが、今日ではクレジットカードやキャッシュカード、pasmoなどの磁気カード、コンピューターのハードディスク、それからあらゆる電気製品で使われているモーター、また近い将来ではリニア鉄道、そして何といっても生活基盤に欠かせない電気を作っている発電機があり、この磁石なくしては発電できないのです。
 磁石に感謝、感謝です。

PASMOなどの磁気カードや、電気製品


 さて、巻頭でコメントしました件ですが、1998年から2000年という、一般にはまだインターネットがそれほど普及して使われていなかったころ、ソフトバンク社長の孫氏がどんなことを言っていたか、次にご紹介します。
 「今日(1999年)、マイクロソフトとかインテル、またデルやコンパックなど、すべてを入れたパソコン産業全体の時価総額400兆円に対して、インターネットのそれは10分の1の40兆円です。
 パソコン業界は、今後10年間にその成長率は鈍るかもしれませんが、やはり伸びるでしょう。でもその伸びも含んだ上で、インターネット産業の方がさらに大きくなると私は確信しています。10年間で10倍以上になるということです。
当時のソフトバンク社長・孫氏その1
 今の不確実性の世の中で、そんな産業はおそらくどこにもありません。世界の株式投資で最も尊敬を集め、アメリカで二番目の大金持ち・ウォーレン・バフェット氏は、コカコーラやディズニー、マクドナルド、シーズキャンディやひげそりのジレット社などの大株主ですが、大量生産の時代における大衆消費財は非常に大きな価値を持つもので、それはそれで正しかった。
 しかし、これから10年間でコカコーラの飲まれる量が10倍に増えるのか。ディズニー映画の好きな人は今までの10倍見るのか、ひげを10倍剃るか。なかなかそうはいきません。インターネットの成長スピードに追いつくくらい、コカコーラを飲むというのは大変なことです。
当時のソフトバンク社長・孫氏その2
 たしかにパソコンで大きく世の中が変化したことは間違いありません。これまで電話やテレビや自動車が登場したときも、社会は大きく変わりました。
 しかし、そのパソコンをつないでフルに活用するインターネットは、人々の日常生活の隅々にまで入り込んでいって、さらに世の中を変えることは間違いありません。
 それは電話やテレビや自動車がもたらしたインパクトを3つ全部足したものより大きな変化をもたらす産業になると、確信しています。と言いますのも、1日のうち電話でどのくらいの時間話をしているか、テレビを見ている時間はどのくらいか、車に乗っている時間はと考えると、近い将来インターネットに費やしている時間が最も長くなることに思い当るからです。
 おそらく、朝起きてから夜寝るまで、家でもオフィスでも、生活のすべての場面にかかわってくるでしょう。このように生活に密着して欠かせないツールが成長しないわけがありません。
 冷蔵庫は一度買ったら10年くらいは買い換えませんが、中に入れる食品は毎日買います。それと同じです。インターネットは現在の姿からは想像もつかないような大きな価値を持つようになるでしょう。
当時のソフトバンク社長・孫氏その3
 それなのに、どうしてインターネットについて疑う人がいるのか不思議です。どこかの研究所のアナリストや研究者が、未だにインターネットはガラスの洞窟だ、何の価値もないだとか、小賢しいことを言ったり、書いたりして発表しています。
 また、もうすぐインターネットはパンクすると言っている人もいましたが、専門家であっても、とんでもないことを言う人がいるものです。よくそんなことが言えるなと非常に驚きました。
 彼らはある程度時間が経てば、「穴があったら入りたい」と思うようになるはずです。
当時のソフトバンク社長・孫氏その4
 たとえば、eトレードには一人も営業マンがいない。お店も一店もない。でも一兆数千億円の預かり資産ができてしまった。もう立派な証券会社です。従来の物差しから考えると、全く異質の事業形態がそこに生まれたということを物語っています。
 従来は情報メディアと物の流通というのは完全に離れた世界だったわけですけど、その境界線が一気になくなってきているのです。
 インターネット革命というのは、あらゆる境界線を取っ払っていく。時間、物理的な距離、人種、年齢、性別、業界など、従来、常識では境界線があったものに対し、もう一度ビジネスモデルそのものを考え直す、あるいは生活習慣そのものを考え直すことになるんじゃないかと思います。
 そういう領域までもカバーしてしまうこと一つ取っても、インターネットが伸びないはずがありません。
 だからインターネット革命というものが、あらゆる産業を根底から変えてしまう潜在力を持っており、インターネットの市場規模は間違いなく大きくなるはずなのです。
当時のソフトバンク社長・孫氏その5
 ぼくにはこれから10年間、インターネットのこと以外はささやかないでくれ、ぼくの目の前に見せないでくれ、と思っているわけです。興味がないんだと。
 たとえば100億円の価値の物を1億円で売ってくれると言われても、ぼくの興味はゼロ。目先のおカネに興味なし。99億円のギャップがあってもぼくには興味ないのです。他に欲しい人がどうぞと。
 ぼくの頭のほんの一部分もそこに取らないで欲しい。インターネット以外のことで利益を上げたとしても、そんなものはソフトバンクの戦略から見れば、誤差だと。要らないということなんです。
 つまり、自分達の「志」とか、「ビジョン」「戦略」とかからずれたところへ行っても、大したリターンはない。そこが重要なんです。
 行き当たりばったりの足し算で動くか、戦略で動くか。ぼくは戦略で動きたい。だから、少なくともこの10年間は、インターネットのこと以外は持ってこないでくれ、興味がない。こういうことなんです。
 ですからインターネットがこけたら孫もソフトバンクも駄目になるという声は全く的を得ていますし、一切弁解するつもりはありません。
当時のソフトバンク社長・孫氏その6
 ぼくが常に考えているのは、5年後、10年後、30年後に世の中はどう変わるのかということで、将来を睨んで、その中で自分をどのポジションに持っていくかを考える。
 そのため、人からはただの大風呂敷といわれるのですが、見ようによっては、成長の予言を行なっていると考えられるかもしれません。
 われわれは、依然としてデジタル情報産業を突き進んでいくということ、インフラ的なものを狙うということ、ナンバーワンになれることしかやらない、ということも当初から一切変わってはいないのです。」


 どうです、いかがですか。今日になってみれば、ごく当たり前のこととして受け止められるインターネットについての内容ですが、当時はアナリストや専門家ですら、インターネットはガラスの洞窟だとか、何の価値もないと公言していたようです。
 たしかに1996年〜1997年ころのパソコンには、インターネットの通信機能が常備されておらず、オプションとして初めて追加できる時代でしたが、日本の小学6年生の1/3もがスマートフォンで活用している今日を見て、公言した彼らアナリストや専門家たちは穴があったら入りたいでしょう。
 氏は当時のインターネット産業全体の時価総額は40兆円だと言っていますが、今や(2014年5月末現在)グーグルの1社だけでも39兆円になっていますから、氏に対して反論などできる余地もないことがわかります。

 さて、孫氏のインターネットコメントを見ていただいたところで、当設問に戻りますが、この設問の背景は、物理の原理を知っているだけではダメで、もう一歩も二歩も先を考えて、目に見えないものの問題であることに、いかに早く気づくか、さらにそこから解答に至るどのような工夫をこらすのか、などを見ようとしているものです。

 それでは設問101の解答です。


正解 正解101  図1のように、2つの円筒鉄でT字型を作り、互いにくっつけばBが永久磁石、くっつかないならAが永久磁石。

 では、次の設問を考えてみてください。これはすでにどこかでやったかのような問題ですが、厳密な意味で違います。な〜んだ、すごく簡単ではないかと軽く見ると痛い目にあいそうです。


問題 設問102  コップに氷水がギリギリいっぱいに入っている。この氷が溶けたら、水面はどうなるか。水面が上がって水が溢れ出るか、あるいは水面は下がるか、それともまったく変わらないか。ただし水の蒸発や表面張力は無視する。

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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


梶谷通稔 【執筆者】  梶谷通稔 - かじたに みちとし
岐阜県高山市出身 早稲田大学理工学部応用物理学科卒

元 :   米IBM ビジネス エグゼクティブ
現在: (株)ニュービジネスコンサルタント社長
    日本IBM  GBS 顧問
    東北芸術工科大学 大学院客員教授
    (株)アープ 最高顧問
 講演・セミナー・研修・各種会合に (スライド9125枚とビデオを使用)
 コンピューター分析が明かすリクエストの多い人気演題例
 (参加者層に応じてミックス可) (各1~2時間)
  ・ビジネスの「刑事コロンボ」版。270各社成功発展のきっかけ遡及解明
テレビ出演
  ・不況や国際競争力にも強い企業になるには。
   その秘密が満載の中小企業の事例がいっぱい
  ・成功する人・しない人を分けるもの、分けるとき。
  ・もったいない、あなたの脳はもっと活躍できる!
  ・こうすれば、あなたもその道の第一人者になれる!
  ・求められるリーダーや経営者の資質。
  ・栄枯盛衰はなぜ起こる。名家 会社 国家衰亡のきっかけ。
  ・人生1回きり。あなたが一層輝くために。
  ・どう変わる! インターネット社会


 出版:
  1988年  『企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  1989年   『続・企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  2009年   『成功者の地頭力・あなたはビルゲイツの試験に受かるか』 (日経BP社)

 連載:
  1989年 - 2009年   『徒然草』 (CSK/SEGAの全国株主誌)
  1996年 - 2003年   『すべてが師』 (日本IBMのホームページ)
  1995年 - 進行中   『あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか』 (Web あーぷ社)

※この連載記事の著作権は、執筆者および株式会社アープに帰属しています。無断転載・コピーはおやめください。

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