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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その32:スピード勝負を演出するロジック
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 設問25と同様に、前問では、隠れているもの、わからないもの、不確実なことに思いを巡らせる人間の苦手とする分野に目を向けることにより、正解に至る時間には大きな差が出てくることがわかりました。
 この隠れている部分で前回の説明を補足しますと、隠れている部分はそれぞれの果物を食べることのできない園児たちです。彼らを非リンゴ族、非みかん族、非梨族、非桃族としてその中身を考察すれば、そこにはこの4つの果物全部を食べることのできない園児もそれぞれ含まれているはずです。だから、これら非族の全部を合計すれば、この4つの果物全部を食べることのできない園児の分がその中でダブって計算されることになり、必ず100%をオーバーするはずです。しかし計算結果は100%ちょうどとなっており、それをオーバーしていないわけですから、4つの果物全部を食べることのできない園児はいないということがわかり、したがってすべての園児はどれかの果物を食べることができる、となるわけです。

 さて、前号の冒頭部分では、知能指数IQとの比較などを交えて論理思考パズルの沿革を簡単にまとめてみましたが、次の設問の解説に移る前に、右の写真を見てください。突然、場違いなモデルさんの写真などを出して!と思われる方もおられるかもしれませんが、それが誰であるか、ここで少々思いを巡らせてみてください。なぜ突然の写真か、その理由はのちほど明かします。

 それでは、今号の設問の解説に移ります。


問題 設問32

テニストーナメントがあって、127人が参加した。まず、126人で63試合分を組合せ、残った1人は不戦勝です。2回戦では64人が32試合をします。優勝が決まるまで、全部で何試合することになるでしょう。


 この設問を目の前にした皆さんは、おそらく誰もが次のような疑問を持たれたのではないでしょうか。
 “これまでの設問と比べて、なんと簡単な問題か。従来の思考パズルとは違って頭をひねるようなものでもなく、単純な計算だけで済みそうだが、これは本当にビル・ゲイツが出した設問なのだろうか。もしそうだとすると、何か気付きにくい何か気付かない落とし穴・盲点のようなものが、どこかに隠されているのだろうか・・・”と。

 フェルミ問題をはじめ、当初、漠然としてつかみどころのない印象を受けた設問や、あるいはサンプル解答といった形でいくつもの回答が考えられた設問などを、過去いくつか見てきましたが、たしかにこの設問はそれらとは違って、特別に考えさせるようなパズルというものでもなさそうであり、どう考えてもはっきりとした1つの数値解が簡単な計算だけで出てくる設問としか思えません。  
 テニスのトーナメントではなくとも、甲子園の高校野球でも思い浮かべていただければわかると思いますが、チーム数が同じなのに、相手高校などの組み合わせの違いによって、試合数が変わるなどということはあり得ません。だから、ただ計算していけば1つの答えに到達するはずです。 


 そこで、まずは素直に計算してみます。設問にあるとおり「126人で63試合分を組合せ」をそのまま第1回戦とし、さらに2回戦、3回戦と、図のようなトーナメントの形を頭の中に描いていけば、2回戦は不戦勝の組合せを入れて32試合、3回戦はその半分の16試合、そして順次8、4、2、1試合となっていきます。
 したがって結局のところ、これら全部の試合数の合計をとれば簡単に答が出てくるわけです。

 たしかに従来の設問と比べて、論理的な思考を要するものでもなければ、創造力を発揮しなければならないというチャレンジのしがいがある設問でもなく、このように簡単に解答できてしまうと、これまで見てきた31個の設問の中では、一番、易しい問題だという印象を受けます。
 しかしこの易しいという点を、一応はここで認めたとしましょう。するとまたそこで新たな疑問、「この設問の出題背景は一体何なのか」が頭をもたげてきます。これまで見たどの設問にもあったようなしっかりした出題背景が、はたしてこの設問にあるのだろうか、ということです。

 ここまでに2つの疑問が出てきました。これはビル・ゲイツの設問なのか、という疑問と、こんな簡単な設問に出題背景などあるのか、です。
 この2つの疑問に対する回答、実は次のとおりです。まず後者、そこにはちゃんとした出題背景があります。そして前者、これはビル・ゲイツの出題ではありません、、、が、しかし論理パズルの出題ということではビル・ゲイツの大先輩、大先生にあたる人が出した問題です。
 そうです、前号で論理思考パズルの沿革を見ていただきましたが、これが元祖、トランジスターの発明者・ショックレー博士が1957年、シリコンバレーに研究製造所を開設するにあたり、その募集で応募してきた1人の若者の採用面接に出した最初の問題です。

 もちろん、この面接試験をショックレーが公表するわけがなく、若者側から漏れたということになりますが、では、どうしてこんなに易しい問題なのか。
 それは、今から50年も前、古い時代の設問なので、あえて知能検査に似た簡単な内容にしたから? いや、応募者にとって、従来のしきたりにはなかった初めて体験する論理パズルの面接なので易しいものにした? いや、出題内容はいずれ応募者から漏れて一般に知れてしまうことを想定し、だから問題の難易度のバーを下げ、レベルを低く設定することにより、なるべく多くの若者が応募できるようにした? などなどいろいろ考えられます。
 しかしよく考えれば、能力に優れた優秀な若者を採るのが、本来の目的のはずですから、これらはいずれも本質から、はずれています。現に、このときの若者は、スタンフォード大学で博士号を取り、またフルブライトの奨学金までもらってケンブリッジ大学に留学もした20代前半の頭脳明晰な若者です。

 そのヒントはストップウォッチにありました。それはショックレーが面接の折、ポケットの中にストップウォッチを忍ばせ、応募者が解答するまでの時間を秒単位で計っていたということです。つまりこの設問では、いかに早く解答を出すか、というところを重要視していたわけです。

 ところがこのように説明しますと、たいていは、“な〜んだ、計算スピードの問題か”となります。つまりそのポイントは「物理的な計算スピードにあり」と受け取ってしまいがちです。しかしこの場合のスピードはあくまで副産物的要素でしかなく、本当の背景はそこにはないのです。それはまったく別のところにありました。

 そこでまず、この問題は知らなかったことにして、今いきなり1,999人でのトーナメントに変えた出題だったら、あなたはどうするでしょうか。やはり、第1回戦は1998÷2の999試合、2回戦はそれに不戦勝者を入れて1000÷2の500試合、3回戦は・・・という前述の形で進めていけば、解答には辿り着けますが、それなりの計算時間が必要になります。
 現実にはあり得ませんが、さらに大幅に人数を増やして、999,999人のトーナメントとしての出題だったら、どうでしょうか。順次計算するだけで、一応、答は出てきます。
 しかしこのような大勢のケースになると、いっきに計算ステップが増えますから、誰もが気付くようになると思います。「待てよ? 何かほかの簡単な計算方法があるのかもしれない」と。

 先ほどの設問では、若者の回答は3秒とかからず、正解でした。彼はしっかりとしたロジックを持っていたからです。このロジックを知ってしまえば、対象が1,999人であろうが、999,999人であろうが、何千万人であろうが、誰がやったとしても正解に2秒とはかかりません。実は、このロジックの有無を見るのが背景だったのです。

 この若者の即答にショックレーはムッとして聞いたそうです。「前に聞いたことがあったのですか? どうやって計算したのですか?」と。若者は答えました。「選手が1人敗退するのに1試合必要で、勝者が1人残るには126人が敗退しなければなりません。だから、126試合することになります」と。
 するとまたショックレーは、さらにムッとした顔で言ったそうです。「それは、自分が解いた方法と同じだ」と。若者はそれを見て、「ショックレーは自分と同じ方法で解くのをいやがる人なんだな」と思ったそうです。

 ショックレーは、今度はずっと手ごわい次の問題を出しました。長く答を出せない若者の苦渋する顔を見て、ショックレーの顔は次第に穏やかになり、部屋の雰囲気がほぐれていったようです。
 やっとで正解を告げた若者に、ショックレーは得意げに言いました。「あなたは、私たちスタッフの平均よりも、2倍もの時間がかかっていますね」と。
 もうすっかりあきらめて帰った若者でしたが、のちほど合格の報せが届いたそうです。このショックレーの性格については、機会があればまたご披露しようと思いますが、その行動や考え方から、変わり者の印象はぬぐえません。だからこそ、トランジスターを発明できたとも言える点がありそうです。

 ところでこのトーナメントの人数設定ですが、もしも計算ロジックを見るのであれば、順次計算方式との時間差がその場ではっきりと出るように、なぜもっと人数を増やして出題しなかったのか、あるいはまた、単純計算のスピードを見るためなら、もう少し人数を減らしてもよかったかもしれないが、どうして127人だったのか。
 そこで考えられるのは、前述しましたように「人数を多くすると、時間をかけなくても済む方法があるのではと、その場でたまたまこのロジックに気付く応募者がいるかもしれない。もともとロジカル思考の生活をしていれば、すでにこのような考え方はしているはずだから。」という懸念、そしてまた一方「人数を少なくすれば、計算の素早い人とロジックを持っている人との時間差がなくなり、区別がつかなくなる。」とするものです。
 ウインブルドンテニスのエントリーは128名ですから、この現実的な数字も考慮に入れた人数設定だったのだと思います。

カーリー・フィオリーナ

 さて、このロジカル思考の生活ということで、冒頭の写真に戻ります。彼女はこんなことを言っています。

 「東海岸の家から離れたかったので、大学はスタンフォードを選んだ。私は面白そうな講座を片っ端から取った。化学、生物学、物理学、経済学、人類学、天文学、音楽・・・。新しい知識がどっと押し寄せてきて圧倒されたけど、楽しかった。自分がどんなに物知らずかを知って驚き、勉強が好きだとわかってうれしかった。(中略)倫理学で知ったのは、何が正しくて何が間違っているかの判断はそう簡単ではないこと。絡み合う要素を解きほぐすには厳密さが必要であることだ。これもビジネスに役立っている。特に顧客情報の扱いを巡って板ばさみの状況になったときがそうだった。
 また、論理学ではきちんと思考を組み立て適切な質問をすることは、答以上に重要であることを知った。これは新しい仕事や新しい業種に挑戦するときにとても有効だったと思う。未知の領域に踏み込もうとするときは、論理学的思考がとても大切だ。このことはいつも社員に言っている」。

スタンフォード大学

 皆さんの中でIT業界に関係している方は、冒頭に掲げた写真を見て彼女が誰であるか、わかった方もいると思いますが、卒業後、不動産屋の受付嬢からついに大企業のトップにまで上り詰め、ヒューレット・パッカード社の会長兼CEOを5年半勤めたカーリー・フィオリーナです。
 フォーチュン1000社の中で、史上初の女性CEOということで話題になりましたが、彼女がCEOに就任した1999年のヒューレット・パッカード社は、フォーチュン500社中14位、売上高446億ドルだったものが、2004年には11位の730億ドル、倍近くまでに成長させています。

 前号の連載その31で、今風の地頭とは、主として未知・未経験の分野に対する「論理的に対処・考える頭」、そして地頭力とはそこでの「問題解決能力」と解説しましたが、彼女もその地位と経験を通して、未知の分野に対する論理思考の大切さを力説していることがわかります。

 5年目にはパワーポリティクスに足をすくわれて、彼女は退任することになるのですが、その回顧録「Tough Choices」、(日本語版は「私はこうして受付からCEOになった」)には、一介の不動産屋受付から、問題点を発見し困難なものを選んでチャレンジ、解決策をとことんまで追及、成果が出れば喜びと共にさらにチャレンジというサイクルで、なるべくしてトップになっていくその詳細な過程や、仕事への取り組み方及びマネジメント上の金言が満載されており、女性を含めたビジネス戦士あるいはリーダーにとっては一読の価値がある書籍です。論理思考の大切さということで、引用ご紹介いたしました。

 
ヒューレット・パッカード社

 それでは解答です。


正解 正解32

選手が1人敗退するのに1試合が必要。勝者が1人残るには126人が敗退しなければならない。したがって、優勝が決まるまでの全試合数は126試合。


 冒頭の説明同様、この解答を導きだすのも、勝者というよりも敗者という、つまり隠れているもの、あるいは隠れていくものに焦点を当てることによって、解くスピードがまったく違ってくることが実感できると思います。

 では次の設問を考えてみてください。


問題 設問33

ここに外見上区別のつかない8枚の硬貨があり、そのうちの1枚だけ他のものより軽いものがある。両皿天秤を使って、軽い硬貨を特定するには最低何回量ればいいか。また、9枚の中の1枚を特定する場合だったら、何回量ればいい か。


 余裕のある方は、窓に付いているあのブラインドの問題を考えてください。

問題 設問34

ブラインドのリモコン装置を設計してください。


フェデラー選手

 テニスの説明文の途中、海を見下ろす円形コート上のプレー写真を見て、一体これは何だと思われた方、実は地上210mのヘリポートに作られた臨時のコートです。

 プレー中の2人は、ウインブルドンでの男子シングルス優勝経験者 、アンドレ・アガシとロジャー・フェデラーで、2003年より栄冠が続いているフェデラーは2008年にまた優勝すれば、ビヨン・ボルグを抜いて、史上初の6連覇となります。

 ヘリポートのある建物は321mというホテルとしては世界最高の高さを誇る超高級のバージュ・アル・アラブホテルで、場所は中東のドバイにあり、全202室がスイートルームを持つ2階構造、周りにフェンスがないこのヘリポートはタイガーウッズのエギジビションでも使われました。
 その眺望や高さなどがわかるよう、彼らのデモンストレート中の写真とともにいくつか載せてみます。

 
フェデラーとアガシ選手
ドバイのBurj Al Arab ホテル、ヘリポートが小さく見える
タイガーウッズ

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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


梶谷通稔 【執筆者】  梶谷通稔 - かじたに みちとし
岐阜県高山市出身 早稲田大学理工学部応用物理学科卒

元 :   米IBM ビジネス エグゼクティブ
現在: (株)ニュービジネスコンサルタント社長
    日本IBM  GBS 顧問
    東北芸術工科大学 大学院客員教授
    (株)アープ 最高顧問
 講演・セミナー・研修・各種会合に (スライド9125枚とビデオを使用)
 コンピューター分析が明かすリクエストの多い人気演題例
 (参加者層に応じてミックス可) (各1~2時間)
  ・ビジネスの「刑事コロンボ」版。270各社成功発展のきっかけ遡及解明
テレビ出演
  ・不況や国際競争力にも強い企業になるには。
   その秘密が満載の中小企業の事例がいっぱい
  ・成功する人・しない人を分けるもの、分けるとき。
  ・もったいない、あなたの脳はもっと活躍できる!
  ・こうすれば、あなたもその道の第一人者になれる!
  ・求められるリーダーや経営者の資質。
  ・栄枯盛衰はなぜ起こる。名家 会社 国家衰亡のきっかけ。
  ・人生1回きり。あなたが一層輝くために。
  ・どう変わる! インターネット社会


 出版:
  1988年  『企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  1989年   『続・企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  2009年   『成功者の地頭力・あなたはビルゲイツの試験に受かるか』 (日経BP社)

 連載:
  1989年 - 2009年   『徒然草』 (CSK/SEGAの全国株主誌)
  1996年 - 2003年   『すべてが師』 (日本IBMのホームページ)
  1995年 - 進行中   『あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか』 (Web あーぷ社)

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