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その58 フェルミ問題は「何を軸にして考えるか」が大切
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 前回の解答に初歩的な不備がありました。この不備に気づき助言を寄せていただいた当連載欄の愛読者の方に、この誌上をおかりしここでお礼申し上げます。
 前問では「問題を注意深く読み、直感には頼らず、また見落しがないよう気をつけなければならない」というポイントを見ていただきました。

 では今号の設問はどうでしょうか。次に解説に入ります。

問題 設問58 アメリカにガソリン・スタンドは、何軒あるか。

アメリカのガソリンスタンド

 以前よりこの連載を愛読されている皆さんや、あるいはまた何らかの機会でフェルミ推定という言葉や内容に触れた経験をお持ちの方たちであれば、いきなりこのような設問を問われても驚かれることはないと思いますが、やはりそうではない方たちにとっては、とんでもない設問ということになります。
 フェルミ問題に最初に出くわしたときのその反応や、また例題による詳しい内容の解説については、設問18の「世界中にピアノの調律師は何人いるでしょう」及び設問19の冒頭でコメントした内容を見ていただくことにより、よくわかると思います。

 世界中のピアノ調律師といっても、まずは北朝鮮の情報などありませんから、世界の統計数値などがあるはずはありません。したがってこのような設問は、正確な数値自身を求めているのではなく、その概算値をどのようにして導き出すかの思考過程を見ようというもので、つまり、一見とらえどころのない数値でも、「A はわからないが、BとCさえわかれば計算できるし、Dがわかっていれば、Bは計算できる・・・」と考えることによって推理し、概算値を出せるということで、面接応募者の思考プロセスが評価の対象となるということです。

 だからフェルミ問題は、内容をいくつかの要素に分解し、順次その中身を仮定で推定しながら最終結論にもっていくという方法を取りますので、その回答は千差万別になりますが、ここで前出のピアノ調律師の問題で取った道筋を振り返ってみますと、以下のような形でまず日本での調律師数の概算値を求め、順次、欧米と残りの地域の調律師数を出していく方法をとりました。
1. 日本の人口から世帯数を仮定する。
2. その世帯数から全家庭におけるピアノ設置台数を仮定する。
3. 学校やホール、スタジオ施設など、家庭以外でのピアノ設置台数を仮定する。
4. ピアノ1台当りの調律頻度を仮定し、年間の調律必要台数を推定する。
5. 1人の調律師が1日に調律できるピアノの台数を仮定し、また1ヶ月の実働日数を
  20日として、年間の調律可能台数を推定する。
6. 年間の調律必要台数を年間の調律可能台数で割って、以上、 日本での必要調律師数を
  求める。
7. 欧米でも同様として、日本との人口比の割合で欧米の必要調律師数を求める。
8. 裕福度の目安として国内総生産(GDP)を考え、全世界残りの地域の全GDPは
  日本と同じと仮定し、そこでの必要調律師数を求める。
9. これらの合計により世界のピアノ調律師の概算値を出す。

 これからもわかりますが、その思考構造の基本は需要と供給の形で進め、出発点は現存するピアノの台数でした。そのあと、ピアノがどれくらいの頻度で調律師を必要とするかを仮定することによって最終の調律師数を導き出しました。
 ここでピアノを乗用車に、またピアノ調律師をガソリンスタンドに置き換えて考えれば、当設問58も同様に需要と供給のアプローチで解けそうです。

 では解説に移ります。

 まず、出発点となる乗用車の台数です。と、ここで疑問を持つ人が出てくるかもしれません。バスやトラックも給油が必要なのに、なぜ乗用車だけを対象にするのか?と。
 ここでガソリンスタンドという名称に注目してください。たしかに高速道路沿いのサービスステーションなどでは、バスやトラックが給油しているのを見かけます、がしかし、一般のスタンドでは、その給油光景を見かけません。
バスの給油風景 トラックの給油風景
 それというのも、バスやトラックはディーゼルエンジンを搭載しており、その燃料はガソリンではなく、それより揮発性の低い軽油を使っているからで、その給油のほとんどはバスやトラックのオーナー会社が持つ独自の給油所でおこなっているためです。

広大な道路
 ではガソリンを使っているオートバイはどうか。それは乗用車と比べ、その排気量はもちろん、乗用車王国のアメリカではその台数も相当少ないと思われ、算出の思考プロセスを重要視するフェルミ推定としては、オートバイに関わる数値は誤差の範囲に入ると考え、ここでは乗用車に的を絞って前に進みます。

 さて、ここで需要と供給ということから、すぐ頭に浮かぶのはガソリンの量ということになります。しかしその量は、排気量などからもわかるとおりバラエティに富んだ各種乗用車の種類によって違い、車種・型別の細かな数値の仮定までしなければならなくなります。さらにまた供給側のスタンドを考えれば、大きなところもあれば小さなところもあり、たとえ平均といっても1軒のスタンドでどれだけのガソリンを用意しているか、その概算値すら知らない一般人には、それ以上前に進めないことになります。
 そこで何を軸にして考えるかが重要になります。
そうです、その軸は前に見たピアノの設問で使ったアプローチが参考になるということです。それはサービス時間でした。これを軸にして解いてみます。

 まず、Aがわからなくても、Bがわかれば式のアプローチで、アメリカにおける乗用車の台数をその人口から推定し、その1台当りの給油時間の仮定から、それに対応できるだけのスタンド数を割り出そうという算段です。
 手始めのアメリカ人口についてですが、すでに設問18でその数字を使っています。日本の約3倍の3億人と仮定します。そのうち子供や未成年者、交通機関の発達している都市部の住民や、さらにまた貧困層などは乗用車を持っていないと仮定すると、乗用車保有者は2〜3人に1人、つまり2.5人に1台と見て1億2千万台。

給油中風景
  核家族のアメリカでは、1世帯平均3人ならば1億世帯。1世帯当り1〜2台の乗用車を持っているとしたら、この1億2千万台という概算値はそんなにはずれてはいないはずです。

 では需要におけるこの1億2千万台の1台当り給油頻度はどうか。日本の場合の平均3週間〜1ヶ月に1回を想定した上で、スケールの大きなアメリカの土地事情を考えると1週間に1回程度とします。
 そしてセルフサービスでの給油時間は、満タンにしたあとクレジットカードの事務処理なども含めて1台当り10分程度と仮定すると、週に正味全部で1億2千万x10分=12億分の給油時間が必要になります。

 そこで供給側は1週間にこの12億分に充分耐えるサービス時間が必要となります。昼夜営業のスタンドもあるでしょうが、平均して1日15時間営業として1週間で7日x15時間x60分=6300分。
アメリカの給油所1 アメリカの給油所2
 これは給油機が1台のスタンドの場合です。何台も備えている都市部のスタンドもあれば、1台しかない地方の多くのスタンドもあります。平均して1スタンド当り1.5台の給油機を備えていると仮定したら、6300分x1.5=9450分のサービス時間が可能であるということになります。

 したがって、1週間の需要12億分に対して、供給側として12億分÷9450分≒127000軒のスタンドが必要になるということです。しかしこれは間断なく給油が行われている状態で、実際にはそのような光景は見たこともありません。余裕を見て130000軒というところで手を打ちます。
 ちなみに、アメリカ統計局発表の2002 年小売業調査報告書では、Gasoline stations の数として121,446 と出ていますが、2010年の数もこの値とあまり変わっていないのではないでしょうか。

 フェルミ推定の設問は、一見、荒唐無稽な問題のようにもみえますが、身近なビジネスとも密接な関係があります。
 例えば、新規の商品でもビジネスでも、市場規模や市場状況からフェルミ推定を使ってその売上の大まかな数字をつかんでおき、一方コストは、身近なものとしてかなり正確に近い固定的な数字をあらかじめ出しておけますので、概算で出した売上の数字がこのコストに見合うものかどうかという重要な判断が常に可能です。
 さらにまたこのような思考過程を整理しておくことにより,行く先、予期せぬ問題が生じたときにその原因の所在がわからないというリスクを軽減できるだけでなく、問題がどこにあるのかその発見がしやすくなり,修正改善までの時間も短縮できるため,問題から受ける被害も最小にくい止めることができるというわけです。

 ピアノ調律師のところでも触れましたが、フェルミ推定問題の出題背景は、応募者の示す解答までのロジックにあり、つまりその重要な論理思考過程から、明日何が起こるかわからないという未知の分野における問題解決力、思考力、創造力、あるいは洞察力を垣間見ることができるだけでなく、困難な状況下でいかにねばり強く難問に取組んでいけるかといった、潜在する強い忍耐力や実行力、そして行動力までをも見られるということです。

 おわかりのように、フェルミ問題は思考過程を見るもので、その正確な数値を求めているものではありません。したがって解答の仕方も千差万別です。次はその1つの解答です。



正解 正解58 サンプル解答
需要と供給が合うように、ガソリン対象の乗用車給油サービス時間を軸にして考える。需要側の乗用車の台数をアメリカの人口3億人として推定。子供や未成年者、交通機関の発達している都市部の住民や、さらにまた貧困層などは車を持っていないと仮定すると、乗用車保有者は2.5人に1台と見て1億2千万台。土地スケールの大きいアメリカでの給油頻度は1週間に1回、そして満タンにする所要時間をクレジットカードの事務処理も含めて1台10分程度と仮定すれば、全車で週に正味1億2千万x10分=12億分の給油時間が必要となる。
したがって供給側は1週間に少なくとも12億分のサービス時間を用意しなければならない。昼夜24時間営業のスタンドもあるが、平均して1日15時間営業と仮定すると、1スタンド当りのサービス可能時間は1週間で7日x15時間x60分=6300分。また給油機を何台も備えている都市部のスタンドもあれば、1台しかない地方の多くのスタンドもあるので、平均して1スタンド当り1.5台の給油機を備えていると仮定したら、そのサービス可能時間は6300分x1.5=9450分。したがって、1週間の需要12億分に対して、供給側として12億分÷9450分≒127000軒のスタンドが必要になる。これは間断なく給油が行われている状態で、余裕を見て130000軒という概算値を得る。

 それでは、次の設問を考えてみてください。

問題 設問59 縦に順に並んでいるA、B、C 、3人の生徒がいる。彼らは赤か白かどちらかの色のリュックを背負っている。彼らは自分の前に並んでいる生徒のリュックの色を見ることはできるが、後ろにいる生徒のリュックの色は見ることはできない。もちろん自分が背負っているリュックの色はわからない。つまり、CはAやBのリュックは見ることができ、AはBとCのリュックは見ることができなく、BはAを見られるが、Cはみられないという具合です。そこで先生がこの3人に、「少なくともこの中の1人は赤色のリュックを背負っているが、もしも自分のリュックの色がわかったら手を上げ、その理由を述べなさい。」と告げた。しばらくの沈黙の時間が流れたが、やがて1人の生徒が手を上げ、ちゃんとした理由とともに自分のリュックの色をピタリと当てた。その1人とは誰で色は何色だったか。


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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


梶谷通稔 【執筆者】  梶谷通稔 - かじたに みちとし
岐阜県高山市出身 早稲田大学理工学部応用物理学科卒

元 :   米IBM ビジネス エグゼクティブ
現在: (株)ニュービジネスコンサルタント社長
    日本IBM  GBS 顧問
    東北芸術工科大学 大学院客員教授
    (株)アープ 最高顧問
 講演・セミナー・研修・各種会合に (スライド9125枚とビデオを使用)
 コンピューター分析が明かすリクエストの多い人気演題例
 (参加者層に応じてミックス可) (各1~2時間)
  ・ビジネスの「刑事コロンボ」版。270各社成功発展のきっかけ遡及解明
テレビ出演
  ・不況や国際競争力にも強い企業になるには。
   その秘密が満載の中小企業の事例がいっぱい
  ・成功する人・しない人を分けるもの、分けるとき。
  ・もったいない、あなたの脳はもっと活躍できる!
  ・こうすれば、あなたもその道の第一人者になれる!
  ・求められるリーダーや経営者の資質。
  ・栄枯盛衰はなぜ起こる。名家 会社 国家衰亡のきっかけ。
  ・人生1回きり。あなたが一層輝くために。
  ・どう変わる! インターネット社会


 出版:
  1988年  『企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  1989年   『続・企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  2009年   『成功者の地頭力・あなたはビルゲイツの試験に受かるか』 (日経BP社)

 連載:
  1989年 - 2009年   『徒然草』 (CSK/SEGAの全国株主誌)
  1996年 - 2003年   『すべてが師』 (日本IBMのホームページ)
  1995年 - 進行中   『あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか』 (Web あーぷ社)

※この連載記事の著作権は、執筆者および株式会社アープに帰属しています。無断転載・コピーはおやめください。

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