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その68 直感はおうおうにして間違うことが多い論理問題

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 前号の暗号の設問では、エピソードとしてご紹介した第二次世界大戦におけるエニグマ(Enigma)やミッドウェイ海戦での、相手を欺く「おとり情報」作戦の話に興味を持たれた方も多かったようですが、その設問の背景は、単一的なものの見方をする人にはなかなか解けない問題として、日常、柔軟な考え方ができるかどうかを見ようとするものでした。

 さて今号の設問はいかがでしょうか。それでは解説に入ります。

問題 設問68  A君は20キロメートル離れたところにある叔父さんの家に歩いて出かけました。朝9時に自宅を出て夕方7時に叔父さんの家に着き、1泊した翌日、叔父さんの家をやはり朝9時に出て同じ道を通って、やはり夕方7時に自宅に帰ってきました。しかし歩く速度は一定ではありませんでした。では、A君の行きと帰りの両方で、まったく同じ時刻に通る場所が存在する確率はどのくらいになるでしょう。
図

 この設問を見た瞬間、別々の日に、20キロメートルもの長い距離の中のたった1点を同時に通りすぎる可能性などあり得るのか、と思われた方も多かったかもしれません。
 また、20キロメートルとか、朝9時から夕方7時までの10時間とか、そこに具体的な数値が示されていることから、距離と時間の問題として受け取ってしまわれた方もいたかもしれません。

 たしかに距離と時間を考える問題には違いないのですが、よく考えないと、落とし穴にはまってしまう類の問題です。
 まず回答を考える上で頭の中にパッと浮かぶのは、次のうちの2つ、1つは「同じ場所」、もう1つは「同じ時刻」という2点ではないでしょうか。
 その場合、この2点のうちどちらを軸に考えるかで、次の2通りの反応が出てくるものと思われます。

 その1つ、まず「同じ場所」という考え方がパッと先に出てしまうと、その次にその場所への時間を考えることになります。そしてスッ〜とこの時間ということを考えに入れた途端、歩く速度は一定ではないという壁にぶつかります。
 まったくバラバラの速度で別々の日に歩いている中で、「同じ場所」へ「同じ時刻」に来ることはかぎりなく0に近い、ほとんどあり得ない確率ではないか、と直感的に考えてしまうという反応です。

 一方、「同じ時刻」が先に頭に浮かんだ場合、その次にはそれぞれの日に歩く距離を考えることになります。そしてそのまままたスッ〜と歩く距離を考えに入れた途端、やはり同様、歩く速度は一定ではないという壁にぶつかり、バラバラの速度で別々の日に歩いているというなら、同じ時間で進む距離はそれぞれまったく違うのだから、「同じ時刻」に「同じ場所」に来ることなどかぎりなく0に近い、ほとんどあり得ない確率ではないか、とするもう1つの直感的な反応です。

 つまり、自宅と叔父さんの家の間では、早足の時もあれば、途中、何かを見て立ち止まったり、長い道のりでは休憩することもあるはずで、だからその歩む速度がバラバラである以上、同じ場所を同じ時刻に通過することなどはないに等しいとして、この両者では、そんな場所はあり得ない確率、と感覚的な考え方をしてしまうことになります。

 これは、最初に場所を決めてしまうと、時間が合わなくなり、逆に時間を先に決めてしまうと、場所が合わなくなるという日常経験することを、ごく直感的に頭の中に描いてしまうために起こる現象で、そう考えてしまうこと自体は決して間違っているわけではありません。
 しかし本設問の場合は、意外にも「歩く速度が一定ではない」ということが、正解に深く関係しているということです。それはのちほどわかります。

 お気づきかと思いますが、設問の中にある数値に関して、この両者の考え方・回答には一切の考慮がなされていません。そんな数値など考慮しなくても、歩く速度がバラバラなのだから、最初から答は決まっているではないか、との反論を受けそうですが、ポイントはその数値といっても、距離の20キロでも、その間にかかる10時間でもなく、その時間帯なのです。

図1
図2

 どういうことか。図でもって説明しますと一層わかり易いので、図1を見てください。
 設問では、A君がその両側から朝9時、同時に出発することになります。こうして両側から歩いて進んでいるうちに、図2のようにどこかで出会うことになります。
 たとえ行きと帰りが別々の日であっても、出発時刻から出会うまでに両方とも同じ時間だけ経過しており、その出発時刻自身が両方で同じならば、出会う時刻も同じになります。

 こうして、行き帰りがバラバラの速度であっても、出会う場所が違ってくるだけで、いずれにおいても「同じ時刻」に出会う場所があり、設問で問われている「同じ時刻」に通る場所は100%存在するということがわかります。
 ここに至って、先に述べた「歩く速度が一定ではないことが、正解に深く関係している」ことに気づかれた方もおられると思います。
  つまり歩く速度が一定ではないからこそ、長い道のりで、或る1地点その場所がどこで出会ってもいいという無限に広がった可能性が出てくるということです。
 ここからさらにわかることは、互いに必ず出会う時間帯が設定されていれば、両日の出発時刻や到着時刻がどんなにずれていても、「同じ時刻」に通る場所は100%存在するということがわかると思います。

 では、行きと帰りの出発時刻や到着時刻がそれぞれずれた場合を具体的に検証してみます。ここでは行きと帰りを同じ日に重ね、また帰りを便宜上A’君として説明します。そして時刻そのものは万人共通なので、両者がどのような状況にあってもその時刻自身は両者で同じです。

 まず、A君の到着時刻がA’君の出発時刻より早い場合。このケースでは、すでにA君は全行程を終えてしまっているわけですから、A’君がどんなに早く歩こうが絶対に出会う場面が存在しません。
 またこの逆のA’君の到着時刻がA君の出発時刻より早いケースも同様で、出会う場面はありません。したがって、この両ケースともに「同じ時刻」に通る場所がある確率は0%です。互いに必ず出会う時間帯がなければ、当然、同時に通る場所など最初から存在しないわけですから、改めて考えるまでもありません。

図3

 一方、A君の到着時刻がA’君の出発時刻より遅い場合。このケースでその行程の途中を考えたりすると混乱してしまいがちですが、A君が全行程を終えてしまった観点に立って考えれば、答はすっきりとして明らかです。
 サンプルとして図3を見ていただければわかり易いと思いますが、A君は図の赤斜線部のどこかで、必ずA’君と出会っているはずです。
 したがって互いの時間帯がオーバーラップしているケースでは、「同じ時刻」に通る場所のある確率は100%です。A’君の到着時刻がA君の出発時刻より遅いケースも同様です。

 このように互いの時間帯がオーバーラップしているケースでも、「同じ時刻」に通る場所がある確率は100%になります
 それならば、設問のように出発時刻や到着時刻を両日でまったく同じにする必要はなかったのではないか、との質問が出てきそうです。

 それには2つの回答が考えられます。
 1つは、両日を重ね合わせて考える思考の仕方さえできれば、正解に至る過程は同じであることからさして変わらない、とするもの。
 もう1つは、出発時刻や到着時刻を両日でまったく同じにすることにより、正解に至る過程がわかっている人とそうでない人の差が、回答する時間の長さの差となって出てくるから、とするもの。

 たしかに行きと帰りの出発時刻や到着時刻をオーバーラップする形での出題ならば、きっちりと同じにする場合よりも、その分少しは回答応募者の思考を混乱させることになるかもしれませんが、いずれにしてもこの出題の背景は、合理的で素早い論理思考ができるかどうかを見ようとするものです。

 それでは解答です。


正解 正解68  100%。行きと帰りが同時に行われるとして考えれば、A君が自宅から出発すると同時に、もう1人のA’君も叔父さんの家を出発することになる。朝の9時から夕方の6時までの間で、A君もA’君も途中で道草をしようがしまいが、両者全行程を終えた段階では、必ずどこかで出会っていることになる。時刻そのものは万人共通なので、その出会ったときの時刻は両者で同じのはず。したがってこの出会う場所が、当設問の条件を満たす場所になる。

 それでは次の設問にチャレンジしてみてください。


問題 設問69  1500メートルの直線コースで、プロの競輪選手と素人とが自転車競争をしたところ、プロの選手がゴールしたとき、素人はまだ1250メートル地点で、その差は250メートルもひらいていました。そのため今度は、プロの選手のスタート地点を250メートル下げて、素人が再チャレンジすることになりました。その他すべての条件は最初のときとまったく同じだとすると、どのような結果になるでしょうか。

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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。


梶谷通稔 【執筆者】  梶谷通稔 - かじたに みちとし
岐阜県高山市出身 早稲田大学理工学部応用物理学科卒

元 :   米IBM ビジネス エグゼクティブ
現在: (株)ニュービジネスコンサルタント社長
    日本IBM  GBS 顧問
    東北芸術工科大学 大学院客員教授
    (株)アープ 最高顧問
 講演・セミナー・研修・各種会合に (スライド9125枚とビデオを使用)
 コンピューター分析が明かすリクエストの多い人気演題例
 (参加者層に応じてミックス可) (各1~2時間)
  ・ビジネスの「刑事コロンボ」版。270各社成功発展のきっかけ遡及解明
テレビ出演
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  ・求められるリーダーや経営者の資質。
  ・栄枯盛衰はなぜ起こる。名家 会社 国家衰亡のきっかけ。
  ・人生1回きり。あなたが一層輝くために。
  ・どう変わる! インターネット社会


 出版:
  1988年  『企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  1989年   『続・企業進化論』 (日刊工業新聞社刊) ベストセラー
  2009年   『成功者の地頭力・あなたはビルゲイツの試験に受かるか』 (日経BP社)

 連載:
  1989年 - 2009年   『徒然草』 (CSK/SEGAの全国株主誌)
  1996年 - 2003年   『すべてが師』 (日本IBMのホームページ)
  1995年 - 進行中   『あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか』 (Web あーぷ社)

※この連載記事の著作権は、執筆者および株式会社アープに帰属しています。無断転載・コピーはおやめください。

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