その120 |
見落としがちな確率 |
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前問のコイン投げの設問は、永遠に続くことも起こり得る問題だったため、当初、これは解けないのではないかとされる皆さんもあったかもしれません。 |
それでは、今号の設問に入ります。 |
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さて皆さんの直感として、青色のタクシーが犯人とする確率はどの程度だと思いますか。 当設問の中の数値を変えてあるものの、オリジナルの元ネタは2002年に行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが心理学の実験で出題したもので、以降、その多くが感染者や遺伝子の検査による確率やその他、様々な形に変化して出題されるようになっています。 それでは当設問の解説に入ります。 まずはそのとっかかりとして、突破口となる対処法をまとめた本シリーズの「その73」を参照してみますが、その中にずばり該当しそうな項目が見当たりません。 |
最初に「犯人のタクシーは青色」と目撃者が証言する場合を考えます。
の2通りがあることがわかります。 |
つまり青色タクシーを見て「青色」だと証言する確率は、まずはタクシー全体の中から青色タクシーを見る確率が先にあり、そのあとで正しくその色を識別できる確率を考えねばならないことです。 そこで設問に示されている、
青色タクシーを見る確率:10% 次に誤認の場合です。 |
前述と同様に、緑色タクシーを見て「青色」だと証言する確率は、 |
したがって、「犯人のタクシーは青色」と目撃者が証言する全体の割合は、これら2つの場合を足した 8.5% + 13.5% = 22% ・・・ (2)であることがわかります。 でも、設問には具体的なタクシー台数がないため、なんだかすっきりしないというのであれば、全体の台数を仮にX台とすれば、(1)は0.085X台、(2)は0.22X台となるだけで、(3)は0.085X÷0.22X≒0.386 と同じ結果になります。 それでは前述した「問題を解くに当たってその助けとなるヒント」です。 |
その図形化を使うと、まずタクシーの台数分布は図1のようになります。 |
この40%以下という解答をみると、当初に予想した確率よりもずっと低いために、以外に思えます。 これからもわかるように、よほどしっかりとした事前の綿密な調査をしないと、冤罪や誤った結論付けというとんでもない結果を招くことになってしまうことから、そのような結末を招かないための警鐘問題にもなるということです。 それではここで、ダニエル・カーネマンについてちょっと覗いてみてみます。 |
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この行動経済学の中では、人間の直感的な判断としてスピードなどの利点があるものの、
などから、しばしば人間が陥りやすい不合理な選択について言及されています。 |
人間が直感で答えを出す例として、カーネマンは即答を求める実験で、次のような問題を出しています。 |
またこれも即答してくださいとして、「aで始まる単語と、3文字目にaがくる単語とはどちらが多いと思いますか」という問題です。 もう1つ、日本であなたが次の問題に即答を求められたとしたら、どのように答えますか。 |
「厚生労働省研究班が、タバコの先から出る煙や喫煙者が吐き出した煙を意図しないで吸い込むという、いわゆる「受動喫煙」で年間6800人の人が死亡すると公表しました。では交通事故により24時間以内に死亡した年間死亡者数は、この数よりも多いか少ないか。また実際には何人くらいだと思いますか」という問題です。 おそらくあなたは交通事故による年間死亡者数はこの数よりもずっと多くて、万という単位を想像されるのではないでしょうか。 |
我々は「受動喫煙」による死亡者、あるいは死亡者数などというものには、日常、ほとんど触れる機会がなく、逆にテレビや新聞などを通して、日夜、交通事故のニュースを目にし耳にしているため、断然、交通事故による死亡者のほうが多いと感じてしまうのです。 ちなみに、厚生労働省研究班が公表した年間6800人(四捨五入)の「受動喫煙」死亡者のうち、女性4582人、男性2221人で、職場での受動喫煙が原因とみられる死亡は半数以上の約3600人、また喫煙による死者は年間約13万人と推計されています。 以上、「行動経済学」に関連して、人間の直感的な判断の中の1項目、「頭に思い浮かびやすい情報をもとに判断する」の例を2、3見てみました。 |
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それでは設問120の解答です。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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