その127 |
数が多い問題の解法定番 |
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「考える力・地頭力」、それがグローバル化の世界において非常に高い付加価値をもたらすことを示す「スマイル曲線」、そして前号までの巻頭でそれを実証するここ数ヶ月に起こった出来事、ホンハイのシャープ買収とソフトバンクの3.3兆円という超高額ARM社買収を見てきていますが、ソフトバンクはこれまでにも日本テレコムやボーダフォン、スプリント社の大型買収や、その他、数多くの企業に投資をしています。 ARM社の買収にはアリババへ投資した株の売却が大きな役割を果たしていますが、もともとソフトバンクの創業はソフトの流通業だったはずです。 「ソフトバンクを始めたころは、なけなしのお金でソフトの流通をやっていました。ご存知のようにこの流通というのは、市場が成熟してくると激しい価格競争が始まります。そうなるとマージンがだんだん減っていくわけです。しかも切った張ったの毎日の商売です。 それなのに、こちらは働けど働けど大して伸びない。だからやっぱり早い段階で協力した分、あとになっても価値が持てるようにしたい。それには株式を持つことだと、この数年間ずっと思っていたんです」と。 しかし、アリババのニューヨーク証券取引所に上場して8兆円もの含み益を得たときには、こんな発言をしているのです。 「これで終わりではなく、アリババにとっては<始まり>なのです。(中略)アリババはまだまだ成長する。これは基本部分です。情報革命は始まったばかりで、まだ200年は続きます。中国はまだまだ成長します。eコマースも成長するでしょう。(中略)海外はまた別です。そこにはまた別のチャンスが眠っています。このIPOで世界的な拡大の機会を我々は得たのです。ですから私は、今、とてもエキサイティングしています。 この<お金が全てのものさしではなく、人々を笑顔にすることの大切さ>というくだりの言葉は、孫さんが、創業4年目の25歳のときに受けた次のような医者からの死の宣告が起源になっています。 「最初の兆候は倦怠感のだるさで、お客さんと一緒のときでも体がだるくてしかたがなく"少し失礼します"と言って、オフィスのソファーや車の座席に寝そべる回数が多くなってきたのです。そのうち定期健康診断期がきて、これはちょっと肝炎の疑いがあるぞ、ということになった。すぐ慶応義塾大学病院に出向き、本格的な精密検査を受けると、“このままだと、肝硬変になる可能性が極めて高い。 早ければ1、2年。遅くとも5年で肝硬変になる。5年はなんとかもたせられるかもしれないが・・・”と、担当医から重度の慢性肝炎という思いもよらない宣告を受けてしまったのです。目の前が真っ暗になりました。すぐに入院。会社は始動したばかりで、ようやく幸先のよいスタートが切れたというとき。まだ子供も幼く、どうしてこんな大事な時に死ななければならないのか。夜、病院の個室で一人祈り、そして泣きました。 そんな中、どうしたら自分が病床に居ても会社を動かしていけるか、真剣に考え悩む日がつづきました。あれこれ考え込む一人病床での日々。どうして自分は死ぬ思いで病院を抜け出し、身を削ってまでして働こうと思うのか、何回も何回も自問自答しました。それは、自分自身が会社に行きたい、行かなければならないと思っているからで、誰のためでもない、自己満足のためなのだというのが、正直な答えでした。 では、その自己満足とは一体何なのか。入院する前は、少しでも会社を大きくしたい、ライバルに負けたくない、少しでも多く稼ぎたい、うまいものも食べたい、などなどいろいろな欲望がありました。 では、どうしたら人に最も喜んでもらえるのか。人の命を救えるお医者さん。特効薬をつくる製薬会社。これはわかりやすい。直接生命に関わる仕事ですから。 そこで自分の仕事は、ソフトバンクはどうなのか。情報産業もさらに突き詰めていけば、もしかすると人の命を救う力になるかもしれない。あるいは直接でなくても、それについて”いや面白い、幸せだ、こんなにも豊かな人生があったのか"と、こんなふうに心の底から思ってもらえれば、それはそれで生命を救うのと同じくらい価値のある仕事ではないか。 そう思ったら変な欲も消えてしまい、何かすっきりしてきたのです。そして、もしも元気に戻れるようなことがあれば、そのときはもうやりたい放題仕事をしてやるぞ、という気持ちでいっぱいになったのです。 幸運にも元気になれて動きまわっている今、一人でいる時など、ふとそのとき考えた仕事の価値観を思い出し、その原点を大切にしています」と。 孫さんが学生時代の19歳の折、真剣に考えて作った人生50ヵ年計画は「20代で自分の業界に名乗りを上げて、30代で軍資金を貯める。40代で一勝負して、何か大きな事業に打って出る。50代でそれをある程度完成させて、60代で次の経営陣にバトンタッチし、300年以上続く企業に仕上げる」でしたが、今年2016年の8月で59歳。これまでのその足跡を辿れば、すべての行動が寸分違わず、この50年計画通りの経緯になっています。 さて、それでは今号の設問に入ります。
このような確率の設問では、通常なら選ぶ側の順番があったり、そこで選ばれた対象はもはや次の人は選べない、といった制限のある課題で計算も複雑になるケースが多いのですが、それに比べればこの設問は順番には関係なく、また同じものを2人が選んでもいいという、比較的シンプルな形での出題となっています。 しかしだからといって、500個もある整数での勝敗確率となると、数が多いだけに、どうやって計算すればいいのか、途惑うところです。 そこで1から500の整数ではなく、たとえば1から10の整数として試してみるわけです。 しかし勝つケースといっても、選び方によってはケースが多くあって一概にはわからないではないか、との声も聞こえてきそうですが、必ず解答があるはずです。 では具体的にやってみます。 したがって、「あなた」が勝ちとなるケースは全部で、1+2+3+4+5+6+7+8+9=45 通りです。 結果、求める確率は45/100=0.45、つまり45%となります。また、「あなた」と「友人」には順番がありませんから、「友人」が勝つ確率も45%です。 でも「あなた」と「友人」の2人の確率を足しても90%で、100%にならないのはおかしいではないか、とここで気づかれる方もいるかもしれません。 このように少ない数でやってみれば、やり方の規則性がわかってきますので、たとえ数が大きく増えたとしても同様にして、あとはしごく簡単に計算ができるのです。 ではこの要領で1から500までの整数のケースをやってみます。このケースで この足し算1+2+3・・・+498+499を使わないスマートな方法もあります。それは「あなた」と「友人」の勝つケース数は同じであるという認識から入るものです。つまり全体の組合せ数から引き分けの組合せ数を除いた数、それを2で割れば「あなた」の勝ち数になるということです。 全体の組合せ数は500x500=250000。引き分けの組合せ数は500。だから全体の組合せ数から引き分けの組合せ数を除いた数は250000-500=249500。これを2で割れば「あなた」の勝ち数、124750 通りが出ることになります。 さて、この設問の背景は、大きな量の数字に気後れせず、素早く冷静に取り組む資質の持ち主かどうか、そしてその解き方を見ることのできるような面接試験の場であったとすれば、2人が選ぶ整数の全組合せ数から引き分けの組合せ数を引き、それを2で割って解答を出すスマートなやり方をする人の発掘にも期待しているということでしょうか。 それでは設問127の解答です。
次の設問は愛読者が知らせてくれた問題ですが、良い問題だと思います。やってみてください。
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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