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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その127

数が多い問題の解法定番

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 「考える力・地頭力」、それがグローバル化の世界において非常に高い付加価値をもたらすことを示す「スマイル曲線」、そして前号までの巻頭でそれを実証するここ数ヶ月に起こった出来事、ホンハイのシャープ買収とソフトバンクの3.3兆円という超高額ARM社買収を見てきていますが、ソフトバンクはこれまでにも日本テレコムやボーダフォン、スプリント社の大型買収や、その他、数多くの企業に投資をしています。

 ARM社の買収にはアリババへ投資した株の売却が大きな役割を果たしていますが、もともとソフトバンクの創業はソフトの流通業だったはずです。
 それなのに、なぜ、孫さんは投資会社のようなことを早くから始めるようになったのか、という疑問を持たれた人も多いのではないかと思います。
 その答は、次のような創業10年目ころの孫さんの或る思いにあるのです。

「ソフトバンクを始めたころは、なけなしのお金でソフトの流通をやっていました。ご存知のようにこの流通というのは、市場が成熟してくると激しい価格競争が始まります。そうなるとマージンがだんだん減っていくわけです。しかも切った張ったの毎日の商売です。
 マイクロソフトやインテル、ロータスなど、会社が小さかったときに僕らが一生懸命協力してその製品をいっぱい売ってあげた。その多くの会社がどんどん大きくなっていく。

 それなのに、こちらは働けど働けど大して伸びない。だからやっぱり早い段階で協力した分、あとになっても価値が持てるようにしたい。それには株式を持つことだと、この数年間ずっと思っていたんです」と。

 しかし、アリババのニューヨーク証券取引所に上場して8兆円もの含み益を得たときには、こんな発言をしているのです。

「これで終わりではなく、アリババにとっては<始まり>なのです。(中略)アリババはまだまだ成長する。これは基本部分です。情報革命は始まったばかりで、まだ200年は続きます。中国はまだまだ成長します。eコマースも成長するでしょう。(中略)海外はまた別です。そこにはまた別のチャンスが眠っています。このIPOで世界的な拡大の機会を我々は得たのです。ですから私は、今、とてもエキサイティングしています。
 でも、お金が全てのものさしではない。お金がゴールではないんです。もちろんお金を持つことも素敵なことかもしれませんが、大切なのはそういうことではないんです。人々を笑顔にしたり、幸せにしたりしたいという情熱が大切なんです。これが一番素晴らしいことなのです」と。

 この<お金が全てのものさしではなく、人々を笑顔にすることの大切さ>というくだりの言葉は、孫さんが、創業4年目の25歳のときに受けた次のような医者からの死の宣告が起源になっています。

「最初の兆候は倦怠感のだるさで、お客さんと一緒のときでも体がだるくてしかたがなく"少し失礼します"と言って、オフィスのソファーや車の座席に寝そべる回数が多くなってきたのです。そのうち定期健康診断期がきて、これはちょっと肝炎の疑いがあるぞ、ということになった。すぐ慶応義塾大学病院に出向き、本格的な精密検査を受けると、“このままだと、肝硬変になる可能性が極めて高い。

早ければ1、2年。遅くとも5年で肝硬変になる。5年はなんとかもたせられるかもしれないが・・・”と、担当医から重度の慢性肝炎という思いもよらない宣告を受けてしまったのです。目の前が真っ暗になりました。すぐに入院。会社は始動したばかりで、ようやく幸先のよいスタートが切れたというとき。まだ子供も幼く、どうしてこんな大事な時に死ななければならないのか。夜、病院の個室で一人祈り、そして泣きました。

 そんな中、どうしたら自分が病床に居ても会社を動かしていけるか、真剣に考え悩む日がつづきました。あれこれ考え込む一人病床での日々。どうして自分は死ぬ思いで病院を抜け出し、身を削ってまでして働こうと思うのか、何回も何回も自問自答しました。それは、自分自身が会社に行きたい、行かなければならないと思っているからで、誰のためでもない、自己満足のためなのだというのが、正直な答えでした。

 では、その自己満足とは一体何なのか。入院する前は、少しでも会社を大きくしたい、ライバルに負けたくない、少しでも多く稼ぎたい、うまいものも食べたい、などなどいろいろな欲望がありました。
 でも、"5年、もつかどうか、死ぬかもしれない"と言われたとき、それらの欲望が、どれもちっぽけなものに思えてきたのです。会社を大きくしていくことが本当に幸せで満足につながるのか、多く稼いでおいしいものを食べ、高価な洋服で着飾り、豪邸に住み、高級車に乗るといった、物理的に豊かで、ぜいたくな暮らしをすることが満足なのか。
 そこで気が付いたことは、実はそれらは真の満足ではない。究極の自己満足とは、人に、笑顔で喜んでもらうことなんだということでした。お客様や株主、また社員や家族などの身の回りの人たち、あるいは地球の裏側の小さな女の子など、
まだ会ったこともない人たちから、孫のやった仕事なり、ソフトバンクがかかわったものについて、ニコッと笑顔で"ありがとう"と喜んでもらえたとき、感謝してもらえたとき、そのときこそ究極の自己満足が得られるのではないか、心底、そう思ったのです。つまり人知れず喜んでもらうことのために、自分に残された人生を過ごせたら、これ以上幸せなことはない。キザなようですが、本当に心の底からそう思いました。
 では、どうしたら人に最も喜んでもらえるのか。人の命を救えるお医者さん。特効薬をつくる製薬会社。これはわかりやすい。直接生命に関わる仕事ですから。
 そこで自分の仕事は、ソフトバンクはどうなのか。情報産業もさらに突き詰めていけば、もしかすると人の命を救う力になるかもしれない。あるいは直接でなくても、それについて”いや面白い、幸せだ、こんなにも豊かな人生があったのか"と、こんなふうに心の底から思ってもらえれば、それはそれで生命を救うのと同じくらい価値のある仕事ではないか。
 そう思ったら変な欲も消えてしまい、何かすっきりしてきたのです。そして、もしも元気に戻れるようなことがあれば、そのときはもうやりたい放題仕事をしてやるぞ、という気持ちでいっぱいになったのです。
 幸運にも元気になれて動きまわっている今、一人でいる時など、ふとそのとき考えた仕事の価値観を思い出し、その原点を大切にしています」と。

 孫さんが学生時代の19歳の折、真剣に考えて作った人生50ヵ年計画は「20代で自分の業界に名乗りを上げて、30代で軍資金を貯める。40代で一勝負して、何か大きな事業に打って出る。50代でそれをある程度完成させて、60代で次の経営陣にバトンタッチし、300年以上続く企業に仕上げる」でしたが、今年2016年の8月で59歳。これまでのその足跡を辿れば、すべての行動が寸分違わず、この50年計画通りの経緯になっています。
 病に倒れることによって、気づいた利他の心。今後も人々の幸せに向けて、さらなる活躍を期待したいと思います。

 さて、それでは今号の設問に入ります。

設問 127

あなたと友人とが無作為にそれぞれ1から500までの間の整数を1つ選びました。あなたの選んだ数が友人の選んだ数よりも大きい確率はどうなるか。

 このような確率の設問では、通常なら選ぶ側の順番があったり、そこで選ばれた対象はもはや次の人は選べない、といった制限のある課題で計算も複雑になるケースが多いのですが、それに比べればこの設問は順番には関係なく、また同じものを2人が選んでもいいという、比較的シンプルな形での出題となっています。

 しかしだからといって、500個もある整数での勝敗確率となると、数が多いだけに、どうやって計算すればいいのか、途惑うところです。
そこでこのような数の多い問題のときに使う対処定番を思い出してください。
 つまり、当連載「その73」で解説した対処法を参照してみますと、数量が多い問題は小さな数字や少ない量で単純化、シンプル化してやってみる、とあります。

 そこで1から500の整数ではなく、たとえば1から10の整数として試してみるわけです。
そうすると「あなた」と「友人」の選ぶ整数はそれぞれ10通りですから、この2つの整数の組合せは、全部で10 x 10の100通りあることになります。
 そこで次にやらなければならないこと、それは「あなた」が「友人」に勝つケースが何通りあるかを出すことです。
 つまり、その数を100で割ってやれば、求める確率が出ることになるからです。

 しかし勝つケースといっても、選び方によってはケースが多くあって一概にはわからないではないか、との声も聞こえてきそうですが、必ず解答があるはずです。
 ではどうするか。500もの整数がある場合、勝つ選び方は多々あるからこそ、少ない数で単純化、シンプル化して試すわけですから、少ない数で勝つケースを具体的にやってみることです。
 逆に言えば、少ない数でも、そこからある種の規則性のようなものがみつかり、数が多くなってもそれを参考にできということなのです。

 では具体的にやってみます。
「友人」の整数が1だった場合、「あなた」は2から10の間のどの整数でも勝ちになりますから、この場合は9通りあるわけです。
 では「友人」の整数が2であったら、「あなた」は3から10の間のどの整数でも「あなた」の勝ちになりますから、この場合は8通りあります。
 同様に考えていけば、「友人」の整数が9ならば、「あなた」の勝ちは10の整数
しかありませんから、この場合は1通りです。

 したがって、「あなた」が勝ちとなるケースは全部で、1+2+3+4+5+6+7+8+9=45 通りです。

結果、求める確率は45/100=0.45、つまり45%となります。また、「あなた」と「友人」には順番がありませんから、「友人」が勝つ確率も45%です。
簡単で分かり易いこの足し算のやり方は、(図1)の通りです。

 でも「あなた」と「友人」の2人の確率を足しても90%で、100%にならないのはおかしいではないか、とここで気づかれる方もいるかもしれません。
残りの10%は、「あなた」と「友人」が、1と1、2と2、・・・9と9、10と10のように、同じ整数を選んだ10通りケースの場合の確率10/100=0.1、10%なのです。

 このように少ない数でやってみれば、やり方の規則性がわかってきますので、たとえ数が大きく増えたとしても同様にして、あとはしごく簡単に計算ができるのです。

 ではこの要領で1から500までの整数のケースをやってみます。このケースで
2つの整数の組合せは500x500=250000通りで、「あなた」が勝ちとなるケースは、前述にならって全部で、1+2+3・・・+498+499=124750 通り(図2)です。
したがって、「あなた」の勝つ確率は124750/250000=0.499、49.9%となります。
 ちなみに同じ整数を選ぶ確率は、500/250000=0.002、0.2%です。

 この足し算1+2+3・・・+498+499を使わないスマートな方法もあります。それは「あなた」と「友人」の勝つケース数は同じであるという認識から入るものです。つまり全体の組合せ数から引き分けの組合せ数を除いた数、それを2で割れば「あなた」の勝ち数になるということです。

 全体の組合せ数は500x500=250000。引き分けの組合せ数は500。だから全体の組合せ数から引き分けの組合せ数を除いた数は250000-500=249500。これを2で割れば「あなた」の勝ち数、124750 通りが出ることになります。

 さて、この設問の背景は、大きな量の数字に気後れせず、素早く冷静に取り組む資質の持ち主かどうか、そしてその解き方を見ることのできるような面接試験の場であったとすれば、2人が選ぶ整数の全組合せ数から引き分けの組合せ数を引き、それを2で割って解答を出すスマートなやり方をする人の発掘にも期待しているということでしょうか。

 それでは設問127の解答です。

正解

正解

49.9%。「あなた」と「友人」の選ぶ整数はそれぞれ500通りなので、この2つの整数の組合せは、全部で500 x 500の250000通り。次に「あなた」が勝つ組合せが何通りあるかを出して、この250000で割れば、求める確率となる。「友人」が整数1を選んだ場合、あなたは2から500までのどの整数でも勝つので499通り。「友人」の整数が2ならば、498通り、・・・、「友人」の整数が499ならば「あなた」は500の1通り。したがって、「あなた」が勝つ全部の組合せは1+2+3+・・・+498+499=124750 通り。だから「あなた」の勝つ確率は124750/25000=0.499の49.9%。

 次の設問は愛読者が知らせてくれた問題ですが、良い問題だと思います。やってみてください。

問題 設問 128

世の中で13日の金曜日を、あまり良くは言わないようですが、では2016年から2027年の12年間に、「13日の金曜日」がない年はあるでしょうか。

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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

執筆者紹介


執筆者 梶谷通稔
(かじたに みちとし)

テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)

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