その129 |
解法はいくつもある |
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前回の設問で13日の金曜日は、必ずどの年にもあることがわかりましたが、多い年には3回もあるのです。 西欧で13日の金曜日が不吉であると見なされるようになったのは、キリストの最後の晩餐には13人がいて、そのキリストが金曜日に磔刑に処せられたとされていることからのようですが、他にも諸説あるようです。 しかし、それはあくまでも迷信だとして、この13という数字に敢えて挑戦したのがアポロ13号です。 この発射時刻が、米中部時間13時13分。科学全盛の時代に古い迷信を恐れる必要はないと考えた当時の技術者たちは敢えてこの時間を選んだそうです。 支援船外壁の一部が吹き飛ばされ、爆発の結果、残る酸素タンクもだめになり、3つあった燃料電池もだめになり、2つあった電力供給ラインの1つも死んでしまった。燃料電池がだめになるということは、エネルギー源が一切なくなるとともに、水が供給されないということでした。 そこで絶対に守らねばならなかったのは、地球帰還用の司令船内の酸素や電力で、その消費を極力抑えるために、管制センターは司令船内から3人の乗組員たちを月着陸船内に移動させます。 さらに月に接近していたため月の引力が大きくそれを振り切るだけのパワーがなかった。短時間で最善策が求められたこの緊急事態に、多くの専門家が出した結論は、月の裏側を回って月の引力を利用するスイングバイ航法で加速するというものでした。 そこで即やらなければならなかったこと、それは爆発で大きく逸脱してしまった宇宙船の軌道修正でした。 こうして割り出された軌道に、今度は宇宙船をどうやって載せるか。幸運だったのは、推進力は弱いものの、月着陸船に付いているエンジンが、着陸前で未使用だったことでした。 しかし次の難問。その時点で残っていた電力は2日分、しかし地球帰還までには最低4日。そこで命綱の通信システムだけをオンにして、あとの機器の電源はすべてオフ。ナビゲイターシステムまでもオフの措置をとります。 さらに宇宙船のスピードを上げる必要がありました。しかし月着陸船のエンジンは地球帰還用に設計されたエンジンではないので、噴射に対する耐熱材に限度があり、これまた大急ぎで実験データの検索検討がなされ、それをベースに噴射を実行。これもうまくいきました。 ところがまたまた難問。通常2人乗りの着陸船に3人移動したため、二酸化炭素を吸収するカートリッジの限界を超え、船内の濃度が上がってきてこのままでは全員窒息死に至る危機が迫まってきたのです。 そして最後の難関、それは着陸船から地球帰還用の司令船に3人が移動した後、その指令船が地球大気圏に突入する角度の調整です。 そこで支援船を切り離したのち、着陸船のわずかに残ったエンジンパワーでこの角度の微調整に成功。そのあと切り離した着陸船が大気圏に突入して火の玉になっていくのを3人の乗組員は司令船から見ながら、司令船も大気圏に突入。 事故の原因はアポロ10号として用意されていた第2酸素タンクを設計変更で13号に流用し、その据え替えの時に技師が1本のネジを外し忘れたためとわかりました。 それでは今号の設問に入ります。
さて、この設問を見てどう思いましたか。永遠の迷路に入ったような感覚を持った方も多かったかもしれません。 しかし、ここがビル・ゲイツの言う「よ〜く考えよ」です。 そこで最初からそこにいたと考えれば、そのケースは7階段の7つだけです。さらに、そのうち3つのケースの確率は既知数、つまりすでにわかっている確定値ということです。 しかし未知数としてのp2、p3、p5、p6が、まだ4つもあるので、それらの値をどうやって出すのかが問題です。 皆さんがあれこれと思考を巡らせてこられた過程の中で、各々賞金確率の間での関係を必ずどこかで考えておられたはずです。これらの記号による方程式を使えば、簡単に答が出てくることがわるのです。 今5段目に居ますが、進み方は上に行く場合と下に行く場合の2つだけです。 この式の中でp4は既知数としてわかっていますからp6、つまり6段目に行った場合がわかればいいわけです。そのp6の式は同様な考え方で、 この(2)式のp6を(1)式に代入してp6を消せば、p5=1/2p4+1/4p5+1/4p7 ・・・(3) ここでp4とp7はp4=1/2、p7=1の既知数で、これらを(3)に代入すれば、5段目からの賞金確率はp5=2/3と出るのです。 この他にもいろんな解き方があります。考え方の参考になると思われますので、ここにご紹介してみます。 その1つは、どこにいても1段上に行くのも下に行くのも確率は1/2と同じであるということから、居る場所が7段目に近い方で賞金確率は高くなることが容易に予想できます。それを数値化して、賞金確率を全体の距離の中での比率で解くというものです。 例えば5段目に居る場合、賞金をもらえる最上段までの距離は2段、逆に何ももらえない最下段までの距離は4段で、それら合計の全体距離から考えてその距離の比率は2:4、つまり1:2で1/3:2/3。 さらにはこんな解き方もあります。この解法には、どこにいても1段上に行くのも下に行くのも確率は1/2と同じで、常に一定であるという前提が重要です。 居る場所から最上段までの段数をx、賞金確率をyとすると、2つの既知数を使ってグラフが描けます。つまり、 x = 6 のとき y = 0 この設問の背景は、一見、迷路に入ったような感覚に陥りがちな問題を前にしても冷静沈着に、あわてることなく論理的な思考ができるかどうか、またこの設問にはこの他にもいくつかの解法があり、視点を変えた複数の解法にも応えてくれるかどうか、なども期待して見ようとしていのかもしれません。 それでは設問129の解答です。
では、次の問題をやってみてください。
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
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連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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