その45 単純な確率計算への疑問 |
|
||||||
前問は、受験応募者の「発想の豊かさ、奇抜さ、斬新さ」を見ようという点で、その解答はただ1つに限るものではなく、したがって千差万別に発想の数だけ出てくるということですが、そこで迷いも少なく意外とスムーズに新しい発想を展開できる方法として見ていただいたのは、「設問の中に暗に隠されているものを探してみる」ことでした。 |
|
今度は千差万別の解答が出てくるような問題ではなく、これは誰が見てもただ一つの解がもたらされる確率の問題です。 皆さんの中にはこの名前や本来の内容をご存知だった人も多くおられたかもしれませんが、しかしその方たちや、普段、確率という言葉とはあまり縁のない人たちも含めて、もしも自分が、この設問の内容のような状況下に置かれたとしたら、改めて「確率」ということを、それこそ死に物狂いで考えることになるのではないかと思われます。 さて、その確率の基本は起こり得るすべてのケースの中で、該当するケースの割合はどれだけかを数字で表わすものです。 したがってこの知識が少しでも頭にあり、また日頃、状況判断に長けている今風の地頭の持ち主ならば、今号の設問のようにわざわざ本来のロシアンルーレットの問題を作り変えてまでして、まったく同じ解答になるような出題の仕方をビル・ゲイツがするかどうか、という疑問がわくと思われます。 では設問のケースで、シリンダーを回した場合と、回さない場合の確率を見てみることにします。シリンダーを回して、ちょうど弾丸が入っている場所が引き金を引いて当たる場所に来たとき、ここでは命中という言葉を使って説明します。 回さない場合、1回目は命中しなかったわけですから、今度は起こり得るすべてのケースは残りの弾倉の数で5通り、その中で該当するケースは弾丸の入っている弾倉の数の2通り、したがって命中の確率は2/5。
この本来の問題を作り変えたところは、弾丸が2個でそれらは隣り合っているとしたことです。そこでこの弾丸を隣り合わせることにより確率が違ってくるのではないか、ひいてはシリンダーを回した場合と回さなかった場合の確率に、逆転が起こるのではないか、という予測です。 弾倉シリンダーの回転方向は、銃の種類によって時計回りか反時計回りか一方向に決っており、また途中で回転方向が変わるということはありません。ここでは図1のように時計回りとし、命中する場所はシリンダーの真上だとすると、2発目が命中する弾丸の配置は図2の場合です。 1回目に命中しなかったということは、シリンダーが図3のA〜Dのいずれかの状態にあるときだけです。つまり2発目の引き金を引くときに起こり得るすべてのケースは先ほど見た5つではなく、この4つしかないということになり、これは2つの弾丸を隣り合わせにした条件から新たに生じた制約ということです。 2発目もシリンダーを回した場合は、振り出しにもどった最初と同じ状態になりますから、その確率は前述の1/3です。 1/3 > 1/4 。つまり2発目は、弾倉シリンダーを回さないほうがよいということです。 この設問は確率の問題です。したがって当出題背景には応募者の論理思考を見ようということももちろんあるわけですが、それと同時に、単純な確率となる本来のロシアンルーレットを少しひねった問題に受験応募者がどのように反応するか、ひねったこと自体に何がしかの疑問を持つならば、正解に至る解答スピードにも違いとして出てくるのではないか、といった出題側の意向も見てとれます。 それでは解答です。 |
|
ルーレットは賭けを基にしたカジノにおけるメインのゲームですが、なぜ店側はつぶれてしまうようなことがないのでしょうか。それは安全な確率をベースに持つビジネスだからです。損保や生保ビジネスなども同様です。 |
|
前号へ | 次号へ |
ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
※この連載記事の著作権は、執筆者および株式会社あーぷに帰属しています。無断転載コピーはおやめください