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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その45 単純な確率計算への疑問
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 前問は、受験応募者の「発想の豊かさ、奇抜さ、斬新さ」を見ようという点で、その解答はただ1つに限るものではなく、したがって千差万別に発想の数だけ出てくるということですが、そこで迷いも少なく意外とスムーズに新しい発想を展開できる方法として見ていただいたのは、「設問の中に暗に隠されているものを探してみる」ことでした。
 つまり、「その隠されているもので設問を他の表現に変えてみる」という試みが、1つの手がかりとなることを見ていただきました。
 さて、今号はどうでしょうか。では解説に入ります。


問題 設問45 6発入りの弾倉を持つ回転式の銃に、2発弾丸を隣り合わせで入れました。弾倉を回して1発を自分の頭にめがけて打ちましたが、幸い弾は出ませんでした。もう一度引き金を引かねばならないとき、助かるためには弾倉を回した方がよいか、それともそのまま続けた方がよいか。

回転式の銃1 回転式の銃2

 今度は千差万別の解答が出てくるような問題ではなく、これは誰が見てもただ一つの解がもたらされる確率の問題です。
 物騒な内容の設問ですが、これはロシアンルーレットと名の付く確率を題材にした有名な問題で、その由来は「19世紀のロシア刑務所の看守が賭けをするゲームの対象として、囚人に強要したもの」という説と「追い詰められた帝政ロシア軍の将校たちが、互いに決死の覚悟である自分たちの勇気を競い合ったゲーム」という説がありますが、いずれにしてもその名が示す通り、ロシアが発祥の地です。
 しかし本来のロシアンルーレットはこの設問とは違って、ただ1発の弾丸の入った弾倉シリンダーをクルクル回して運命を決めるというものでした。

 皆さんの中にはこの名前や本来の内容をご存知だった人も多くおられたかもしれませんが、しかしその方たちや、普段、確率という言葉とはあまり縁のない人たちも含めて、もしも自分が、この設問の内容のような状況下に置かれたとしたら、改めて「確率」ということを、それこそ死に物狂いで考えることになるのではないかと思われます。

 さて、その確率の基本は起こり得るすべてのケースの中で、該当するケースの割合はどれだけかを数字で表わすものです。
 したがって、n個の弾丸を充填できる弾倉シリンダーで、ただ1発の弾丸が込められた本来のロシアンルーレットの確率ということになれば、最初の引き金で弾丸が出る確率は1/nであり、そのままシリンダーを回さないで続行すれば、2回目は1/(n−1)、3回目は1/(n−2)、・・・の確率であることは容易にわかるとともに、その命中率もどんどん高くなっていくことがわかります。
 また逆に、引き金を引くたびにシリンダーを回せば、いつもその確率は1/nで変わりはなく、したがって本来のロシアンルーレットで続行して行く場合には、シリンダーを回したほうが、そのままシリンダーを回さない場合よりも命中確率は小さいということです。

 したがってこの知識が少しでも頭にあり、また日頃、状況判断に長けている今風の地頭の持ち主ならば、今号の設問のようにわざわざ本来のロシアンルーレットの問題を作り変えてまでして、まったく同じ解答になるような出題の仕方をビル・ゲイツがするかどうか、という疑問がわくと思われます。
 この疑問は邪推のように見えますが、ある意味で重要なことです。最終的にはいずれにしろ出題者側を納得させる数字の裏づけが必要にはなりますが、この疑問はポイントを突いており、ある程度確信的な検証チェックを可能にするとともに、また早めの解答にもつながるということです。

 では設問のケースで、シリンダーを回した場合と、回さない場合の確率を見てみることにします。シリンダーを回して、ちょうど弾丸が入っている場所が引き金を引いて当たる場所に来たとき、ここでは命中という言葉を使って説明します。
 まず当設問でシリンダーを回した場合、起こり得るケースは弾倉のすべての数ということになりますから、全部で6通り。その中で該当するケースは、弾丸の入っている弾倉の数ということで、2通りです。したがって、命中の確率は2/6、つまり1/3です。

 回さない場合、1回目は命中しなかったわけですから、今度は起こり得るすべてのケースは残りの弾倉の数で5通り、その中で該当するケースは弾丸の入っている弾倉の数の2通り、したがって命中の確率は2/5。
 だから、シリンダーを回した場合の命中率1/3のほうがこの2/5より小さいので、シリンダーを回したほうがよい・・・となるのですが、これだと弾丸の数をいくら変えたとしても同じであり、本来のロシアンルーレットと何ら変わりがない、ということになってしまいます。ここで今風の地頭による前述の考え方が意味を持ってくるわけです。

 この本来の問題を作り変えたところは、弾丸が2個でそれらは隣り合っているとしたことです。そこでこの弾丸を隣り合わせることにより確率が違ってくるのではないか、ひいてはシリンダーを回した場合と回さなかった場合の確率に、逆転が起こるのではないか、という予測です。
 では、どこでどうなるのか。よ〜く考えれば、1回目に命中しなかったことにより、次に起こり得るすべてのケースの数に変化が生じてくるということです。つまり、弾丸が隣り合っているがために、本来のロシアンルーレットとは違って、その起こり得るシリンダー内のすべての配列数に制限が出てくるということです。
 長々とした文章によるミスリードを避けるため、ここでは手っ取り早くわかる図を用いて解説いたしますが、面接ではこのように図を頭の中でイメージすることで、一層はっきりしてくると思います。

図1 図2

 弾倉シリンダーの回転方向は、銃の種類によって時計回りか反時計回りか一方向に決っており、また途中で回転方向が変わるということはありません。ここでは図1のように時計回りとし、命中する場所はシリンダーの真上だとすると、2発目が命中する弾丸の配置は図2の場合です。

 1回目に命中しなかったということは、シリンダーが図3のA〜Dのいずれかの状態にあるときだけです。つまり2発目の引き金を引くときに起こり得るすべてのケースは先ほど見た5つではなく、この4つしかないということになり、これは2つの弾丸を隣り合わせにした条件から新たに生じた制約ということです。
図3
 したがって2発目にシリンダーを回さない場合には、この起こり得るすべてのケースの中で、命中するのはDのケース1つしかありません。だからその確率は1/4です。
 2発目もシリンダーを回した場合は、振り出しにもどった最初と同じ状態になりますから、その確率は前述の1/3です。
 1/3 > 1/4 。つまり2発目は、弾倉シリンダーを回さないほうがよいということです。

 この設問は確率の問題です。したがって当出題背景には応募者の論理思考を見ようということももちろんあるわけですが、それと同時に、単純な確率となる本来のロシアンルーレットを少しひねった問題に受験応募者がどのように反応するか、ひねったこと自体に何がしかの疑問を持つならば、正解に至る解答スピードにも違いとして出てくるのではないか、といった出題側の意向も見てとれます。

 それでは解答です。


正解 正解45 弾倉シリンダーを回した場合の確率は2/6、つまり1/3。回さなかった場合、1発目が空砲であったことから、そのとき命中場所に空砲箇所が来ているケースは4通り。その4通りの中で、次に回して命中場所に弾丸が来るケースは1通り。だからこのとき、起こり得るすべてのケース4通りの中で該当するケースは1通りなので、その確率は1/4。確率を比較すれば 1/3 > 1/4 であることから、弾倉シリンダーは回さないほうがよい。

ルーレット カジノ

 ルーレットは賭けを基にしたカジノにおけるメインのゲームですが、なぜ店側はつぶれてしまうようなことがないのでしょうか。それは安全な確率をベースに持つビジネスだからです。損保や生保ビジネスなども同様です。
 その解説は次号で試みたいと思います。この確率が出てきたところで、次の問題をやってみてください。


問題 設問46 2人の子供を持つ母親がいる。そのうち1人は女の子であるとき、もう1人の子も女の子である確率はどれだけか?


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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

執筆者紹介


執筆者 梶谷通稔
(かじたに みちとし)

テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)

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