その44 問題の裏を読む |
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前問では100個もあるロッカーを、毎回違う飛び飛び間隔で開閉するということから、複雑極まりない問題に見えましたが、ある種の法則に則った数列の世界の答として解けたのは、横に並んでいる対象物に規則正しいルールが課せられているからでした。 |
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この新たな設問に類似の問題としてこれまでにも、設問24の「ビル・ゲイツの浴室を設計するとしたらどうしますか」や、設問34の「ブラインドのリモコン装置を設計してください」などがありましたので、それらをご覧いただいている皆さんならば、おそらく戸惑うことなく回答に取りかかれたものと思います。 「戸惑うことなく」と申し上げたのは、過去の例を通してその出題背景に共通しているものを、うすうす感じておられると思うからですが、そのお気づきになったと思われる共通しているものとは、いずれも確たる数値解が出てくるというような類の問題ではなく、受験応募者の「発想の豊かさ、奇抜さ、斬新さ」を見ようとしている、ということだったと思います。 では、解説に入ります。 それはどういうことかと言いますと、言い換えてみることにより設問で隠れているものが出てきて、それが大きなヒントになるという意味です。 当初、設問を見た途端、すごく複雑そうに感じてしまった前問のタイトルに「隠れた規則性の見極め」と付けたのもその意味からで、設問を注意深く読んでいくと、巻頭で述べた“あえて伏せた”糸口として、この隠れた部分のヒントに気づくはずなのです。 では別の他の表現にするとして、今号の設問の場合はどうでしょうか。
さて、設問は棚置き場だけについて尋ねていますが、どのスパイスがどの容器に入っているかがあらかじめわかっていないことには、その容器を置くどんなに優れたアイデアの棚を設計してもまったく意味をなしません。 次に、触覚、聴覚、味覚、嗅覚を使うことを考えてみますが、味覚や嗅覚は棚というよりも容器の中身自身を云々することに関係することですから、あくまでも棚の設計ということから考えてこれらは除外します。
そこで残る聴覚に目を向けてみます。盲人は視覚が不自由であるだけに、その感覚を補うための聴覚は人並みはずれたものになっているということは既知の事実です。すでに盲人用として、音声式の時計や体温計、体重計などが商品化されていることからも、聴覚に訴える棚ならば歓迎されるはずです。 そこで音声式を考えたいところですが、利用するスパイスの種類が少しの場合はともかくスパイスにもいろいろな種類があり、その種類に制限なく誰でも適宜利用できるような自由度を持たせるためには、あらかじめスパイスなどの名前を音声で入れておくことには無理があります。 そこで、スパイスの量が少なくなってきたら補充を報せるような音が出るという付加価値案です。それには棚のスポットの1つを補充測定用スポットとして割り当てた設計にして、そこに入れたら重量が自動的に測れるようにして、結果、「補充が近く必要」と「ただちに補充が必要」との2段階くらいに分けた電子音が聞けるようなものにしておきます。 この容器を収めるスポットのサイズや重量測定という観点から、容器は詰め替え用のふりかけ式で統一したものにしてもらいます。というのも、市販のスパイスはいろんな形やサイズの容器に入っているため、うまくスポットに収まらなかったり、また容器の重量もバラバラだからです。もちろん詰め替えは健常者に手伝ってもらい、それぞれの容器には点字のラベルを貼ってもらうことになります。 なお、ふりかけではどれだけの量を出したのかわからないではないか、という心配もありますが、計量スプーンなどでは山盛り一杯か、すりきり一杯かなどの判別となると盲人には一層困難です。そこで一定量だけ出るボタン装置を容器に施せばいいのですが、そこまで費用をかけなくても、味覚も研ぎ澄まされた盲人の舌のほうが、はるかに勝っているはずですから、少しずつのふりかけで本人が味見をしながら適量を判断してもらえばいいのではないかと思います。 それでは解答に移ります。当設問にはいろいろな発想に基づく設計案があり、次はそのサンプル解答です。 |
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それでは次の問題を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
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連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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