その7:極端を考える「ひらめき」 |
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こんなところに落し穴が! という時間差までも考慮に入れた前回のスイッチの問題は、まさに人間の盲点を突くのもでしたが、さて、次の設問7は応募者の何を見ようとしているのでしょうか。 |
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白玉と赤玉がどちらも同じ数だけあるわけだから、このような同じ条件のもとで無作為に1個の玉を取り出すとするなら、白玉を引く確率はどう考えても全体で50%のはずです。一方だけを取り出しやすいようにすることなどは不可能のように思えます。果たしてそうか。 ではまず、便宜上、二つの箱に名前を付けてAとBとします。今、Aに白玉だけを50個、Bに赤玉だけを50個入れたとしたら、この状態で白玉を引く確率といえば、全体でAの箱を選ぶ確率と同じになるはずだから50%だろう、と考えます。 これはAを選んで白玉を引く確率とBを選んで白玉を引く確率の和になるということを、直感で出しているわけでそのとおりなのです。 つまりこの直感で考えたことを、確率論として論理的に説明すれば、最初、Aを選ぶ確率が50%。次にそのAの中から白玉を引く確立は白玉の割合になりますから50/50=100%です。だからAを選んで玉を取り出すこの一連の動作で白玉を引く確率は50% x 100%=50%ということになります。しかしBを選んでしまった場合に白玉を引く確率となると、同様の計算で50% x 0/50% = 0%となります。ですから全体からみた確率は、確率論の数式にしたがって前者と後者の和50%+0%となりますので、直感で考えたとおりの50%になるわけです。 そこで、Aに白玉を25個と赤玉を25個、Bにも白玉を25個と赤玉を25個入れた場合はどうなるか。同様の計算からAを選んで白玉を引く確率50% x 25/50%=25%と、Bを選んで白玉を引く確率50% x 25/50%=25%との和になりますので、この場合も白玉を引く確率は50%になります。 では、中の色のバランスを少し変えた場合はどうでしょうか。Aに白玉を30個と赤玉を20個、Bには逆に白玉を20個と赤玉を30個、を入れた場合をみてみます。 Aを選んで白玉を引く確率は、上記に従って50% x 30/50% = 30%、一方、Bを選んで白玉を引く確率は、50% x 20/50% = 20%です。したがって、全体で白玉を引く確率はこの2つの和30% + 20%=50%で、やはり50%と変わりません。 ここでどう考えるか、やはり同じになると考えるか、いや、設問はどのように玉を入れておけばいいのかを聞いているのだから、必ず答があるはずだと考えるかで、道の開け方が違ってくるということです。ここで次のことに気付くかどうか。 つまりAとBに50個ずつ玉を入れる限り、白赤をどのような混合の割合で入れたとしても、白玉を引く確率は50%で変わらない、ということに気付けば、AとBに入っている玉の数が、もしも同じでないとするならばどうなるか、ということに思いがいくはずです。 今、Aに白玉20個、赤玉10個の合計30個を、Bには白玉30個、赤玉40個の70個を入れたとしたらどうなるか。この場合、Aを選んで白玉を引く確率は50% x 20/30% = 1000/30 = 33.3%、Bを選んで白玉を引く確率は50% x 30/70% = 1500/70 = 21.4%、従って全体では33.3% + 21.4%=54.7% と、50%にはなりません。しかもこの場合50%以上に確率が上がっています。 そこで、このAとBの2つの確率計算式をじっくり見ていると、玉を少なく入れる箱に白玉を多くしていけば、全体として白玉を引く確率が高くなっていくことを示していることがわかってきます。 この設問の背景はこうです。最初、どうしても同じ確率となるように思える設問の場合、応募者の頭の中で極端なケースがひらめくかどうかを見ているのです。ソフトやシステムの開発などでは、この「ひらめき」こそ大きな役割を果たすことがしばしばで、特に行き詰ったときなど解決への大きなきっかけを与えてくれた、そういうビル・ゲイツらの体験に基づく設問というわけです。では合格点を取れる解答です。 |
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それでは次の問題でビル・ゲイツは応募者の何を見ようとしているのか、その出題背景も考えながら解いてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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