その8:ソフト開発に必要な消去演繹法 |
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ビル・ゲイツらの体験に基づくソフトやシステム開発における「ひらめき」の重要性から、前回は、応募者の「ひらめきレベル」を見ようというものでしたが、さて今回はどうでしょうか。 |
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説明を分かり易くするために、ここで各箱に臨時の呼び名をつけます。 それぞれのラベルの貼ってある箱を、赤ラベル箱、白ラベル箱、混合ラベル箱、そして真に赤玉だけが入っている箱を赤箱、同様に白箱、混合箱と呼んで説明を進めます。 |
赤白2つの情報だけで3つの箱を当てるこの問題は、すでに見ていただいた設問その6のオン・オフ2つの情報量だけで3つの部屋のスイッチを当てる課題とどこか似ています。この種の問題の特徴として、1ビット分の情報だけで当てるものが3つとなった途端にややこしくなるのです。不可能と思えたスイッチの問題は、熱という触覚で感知できる新たな情報を1つ増やすことによって解決することができましたが、この設問8では熱や触覚に頼る情報とは無縁のようです。 まずどの箱から1個の玉を取り出しても、さらに次の箱からもう1回取り出さない限り箱の特定ができないように思えます。 たとえば最初、赤ラベル箱を選べば、実際に真の白箱か混合箱かのどちらかから取り出すことになりますから、赤玉、白玉のどちらも出てくる可能性があり、次のチェックが必要と思われます。白ラベル箱の場合も同様ですし、また混合ラベル箱の場合も、実際は赤箱か白箱から取ることになりますから、やはり二段階チェックが頭に浮かびます。 事実この設問に対して、応募者は3つのタイプに分かれるようです。簡単だとするタイプ1、簡単なはずがないと考え込むタイプ2、不可とするタイプ3です。 タイプ1は、赤ラベル箱から赤玉、あるいは白ラベル箱から白玉が出たとする仮定から解き始めた場合です。 中身がラベルとは違うということから、白箱と白ラベル箱の組合せはありえないので、白ラベル箱は混合箱、混合ラベル箱は赤箱と特定できる、というものです。 しかし仮定がはずれて、赤ラベル箱から白玉が出た場合は、それが白箱か混合箱かの区別がつかなくなり、お手上げです。そこはもうタイプ3の世界になるわけです。 では、いま一度もう少し深くまで考えてみようというタイプ2の世界はどうか。つまり、仮定がはずれ、そこでお手上げとなってしまうタイプ1やタイプ3の世界とは対極にある世界、すなわち、仮定がはずれても特定できる方法はないものか、との発想をする世界です。そんな方法なんか・・・ 実はあるのです。それは混合ラベル箱から玉を取り出すときです。実際その中身は赤箱か白箱ということですから、いずれの玉が出ても確実にその玉の色の箱だと特定できますよね。仮定がはずれようがはずれまいが、一発でその箱の中身を断定できる、この1点こそが新たな助けとなる情報なのです。すなわちスイッチの設問と違うところは、最初の試みで中身が特定できれば、ラベルと中身が違うというこの問題の持つ特異な情報とともにすべてが解けてしまうということです。 混合ラベル箱から白玉が出た場合も、同様な過程を踏んで特定できるわけです。 この設問の出題背景は一体何なのでしょうか。それはシステム設計やプログラミングには不可欠な要素、難しい言葉で言うならば、応募者の消去演繹法レベルを見ようとしているものです。つまり「当設問は消去法の問題」と気付いて、その突破口となる新たな情報は何か、それは「一発でその箱の中身を断定できる方法から突破口が得られる」というところに行き着くかどうかなのですが、そこまで考えたかどうか、これを解いた人はいずれにせよこの消去演繹法を使って解いているということです。 |
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では次の設問を、やはりなぜこんな設問を出すのかその背景を考えながら解いてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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