その89 |
行き詰まったら、視点を変えてみる |
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方程式を使えばしごく簡単に解ける問題を、敢えて方程式を使わずに解いてみよ、という前問は、マイクロソフトで何回も出題されている問題でした。 これは、日常自然に起こり得ることを方程式などを使わずに、そのままの形で解いていくのが一番の基本であるとの見方から出題されているもので、これこそ知識などを取り除いた本来の素頭で解きなさい、ということに通じる地頭力を試すよい例です。 方程式で解ける問題は、論理的に詰めていけば必ず解に辿りつけることから、論理的な道順で問題を深く考えるクセを常日頃からつけておくことが大切だというメッセージです。 では、今号の設問はどうでしょうか。
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ラクダと賢者の問題ということで、皆さんの中には直近に出題された設問87を思い出された方たちも多くおられたかもしれません。17頭のラクダを遺言どおりに分けるとすると、どうしてもラクダを断片にして傷つけなくてはならなくなり、題意にそぐわなくなってしまうわけです。 この設問を改めて読み直しますと「隣の街までラクダに乗って競争する。しかし街の門を遅くくぐったほうが勝ち」ということです。 しかしどのような問題でも、必ずどこかにその手がかりや糸口、突破口があって、その着眼点を探ることで正解に至る必然性の道が開けたというこれまでの体験から、以前のその設問87を注意して見てみますと、問題文の中に違和感を感させるもの、つまり場違いな感を抱かせる数学者という言葉があり、そこから突破口が見つかりました。 では、当設問89の場合はどうでしょうか。設問87と比較してみますと、数学者は登場していませんので、数学的に解ける問題ではないことがわかります。がしかし、それに匹敵するものとして、賢者が登場していることがわかります。 そこで賢者とは、となるのですが、辞書などに載っている賢者の定義はといいますと「道理に通じたかしこい人」となっていて、これはいかにも人を小バカにしたような漢字をただ平仮名にしただけの定義で、それではかしこい人とはどういう人なのか?と、この定義をした学者?に質問したくなります。 したがって、ここでは皆さんの頭で想像されているような「頭の回転が早く、物事を正しく判断して応用が利き、さらに機転が利く人」と考えて前に進みます。 皆さんの中には、2011年に封切りされた映画「ヒューゴの不思議な発明」を見られた方も多いのではないかと思います。 そこで映画を見なかった方はもちろん、見た方たちのためにも、当設問の解法に大いに関係する部分をのぞいてみることにします。 この映画の映像を担当したのが、アカデミー視覚効果賞を2度も受賞したロブ・レガートという人です。彼は、実写と模型の映像が実写に関与していた人たちでさえ、それらが区別できないような技術で仕上げる人で、その映画の実績には、 1997年 タイタニック アカデミー視覚効果賞 1998年 アルマゲドン 2000年 キャスト・アウエイ 2001年 ハリー・ポッターと賢者の石 2004年 アビエイター 2009年 アバター 2011年 ヒューゴの不思議な発明 アカデミー視覚効果賞 などがあり、どれもよく知られているものばかりです。彼はこんなことを言っています。「私が手がける映像では、ファンタジーとリアリティの境界線を狙います。どちらに傾いてもダメです」と。 では、その中で当設問の解法とこの映画「ヒューゴの不思議な発明」と密接な関係があるシーンを見ていただきます。それは義足をした俳優がバスター・キートン風のドタバタを演じ、汽車の扉の取っ手に彼の義足の金具が引っかかり、引きずられていくシーンで、ご覧のような順序で展開していきます。 彼が言うには、 では、どうやって彼はこの問題を解決したのか。そこで、彼の撮った撮影技法とは、 だからどうなんだ、この設問とどう関係するんだ、という声も聞かれるかもしれませんが、彼の取った考え方が当設問の解法を示すよい例の一つとしてここに取り上げたわけです。 そうです、逆転の発想です。ここまでくればもうおわかりだと思いますが、この設問でこの逆転の発想を応用しますと、兄弟のラクダを入れ替えるということになります。 この出題背景は、日常に目にしているものはどうしても固定観念として定着してしまうことが多いのですが、そんな中で固定観念に捕らわれることなく、脳をいつも柔軟に考える状態に保っているかどうか、またその延長として常に視点を変え新しい世界を見い出そうというパイオニア資質の持ち主かどうか、そのあたりを見ようとしているものです。 それでは設問89の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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