その90 |
結果が逆のように出ていたら、逆転の発想を。 |
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映画「ヒューゴの不思議な発明」を参考例として、設問89の解き方を説明しましたが、そのトリックを担当したのはアカデミー視覚効果賞を2度も受賞したロブ・レガートという人で、彼の作品には随所にトリックが隠されています。 皆さんが、DVDなどで再び観るような機会があるならば、皆さんの目でこれらトリック部分を探し出すことにチャレンジしてみてください。また違った角度からの映画鑑賞もできるのではないかと思います。 さて、今号の設問はどうでしょうか。
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まずこの設問を普通に考えれば、「そんなバカな!」というのが一般的な反応で、何かトリックでもあるのか、そう考えてしまわれた読者の方も多かったのではないでしょうか。 しかし設問の中に、「鬼も善人も合理的な考え方の持ち主」とあります。つまり論理的な手法を使えば解けるということなのでしょうか。 当連載については、まだ知ったばかりだという方たちには少々お待ちをいただき、これまでの連載愛読者の皆さんには、ここでその過去を振り返っていただくことにしますと、次のような設問に思い当るのではないかと思います。 1つは設問49の「村の女王」の問題。このケースでは登場者が50組の夫婦という多人数ですが、結局は2人だけの場合を起点として、順次、相手の思惑と動きを見ていくことにより解答に至りました。 いずれの設問でも、2人の場合を起点として、相手がどのように考えるかを論理的な視点から見ていくことで解決しました。 そんなことを言っても、7番の井戸水の解毒効果が一番強く、その井戸水を使えるのは鬼だけなのだから、やはり善人の助かる術などはないのではないかと、堂々巡りが始まります。なぜ、堂々巡りが起きてしまうのか。そこでビル・ゲイツの言う「よ〜く考えよ」ということです。 ではその、そもそも回答者を困惑させている堂々巡りの原因となっているものは何か。つまりこの設問で回答者を一番迷わせている原点は何なのかと、改めてそこに立ち返ってみますと、それは「善人は生き延び、鬼は死んだ」と、その結末が普通に考えられるものとはまったく逆の結果になっているということです。 つまり「善人が生き延び」と「鬼が死ぬ」という厳然とした結末に対して、それがどんな状況のもとで起こるのかを追求してみたらどうか、ということです。 つまり、設問にある条件のもとでは、最初から善人が助かる術はないと考えてしまう点がネガティブな方向へと導いてしまう岐路で、まずはその考え方を改め、この条件があるからこそ善人は助かるというふうに、逆に考えてみたらどうか、という示唆です。 そこで、設問で提示されている条件、 そこでこの条件2に、もう1つ先ほど見た「相手がどう考えるかのところを詰めていけば、何かがわかってくる」を加味して、しばし思案してみます。 ここで逆転の発想です。その発想とは、善人にとって、この7番はもちろん、6番も毒水であり、条件3によって、善人はそれらを解毒する井戸水を用意できないというふうに考えるのではなく、善人が助かるために、逆にこれらの毒水が解毒剤となるようにすればいい、というふうに考えるのです。 そうです。そのためには、あらかじめ善人は1番の井戸水を用意しておくのです。そして鬼の指定したコップの水を飲む前に、この用意しておいた水を飲み、そのあと直ぐに鬼の水を飲めば、鬼がたとえどの番号の井戸水を用意しようとも、鬼の水が解毒剤になることになります。 いや待てよ、鬼がどの番号の井戸水を用意しようとも、というのは正しくない。「今のような案を善人が考えるかもしれない」と、鬼がその裏をかいて1番の井戸水を用意していたらどうするんだ、との声がここで聞こえてきそうです。 善人は万全を期さねばなりません。そこで善人はさらに2番の井戸水も用意しておくのです。 では次に、「鬼が死んだ」という課題です。 ところが、それでも命題では鬼は助からなかったということです。それは一体どういうことなのか。しばし思考。 このように考えて、この7番の井戸水が逆に毒薬として働くとしたら、その前に飲む水は1番から6番の井戸水ではない、ということになります。つまりそれ以外の水、通常の生活水のような水ならば、結末は命題に合致します。 前述のようにこの設問は、相手はどう思っているかを考えた上で、どのような行動を取ったらいいかという論理思考の問題です。アメリカではこの種の面接試験問題が多くの企業で出題されています。 その根底にある出題背景とは、受験者の論理思考による戦略能力を見ようとするものです。競争相手の多くいる今日のビジネス社会で、どのようにして相手に対する優位性を維持していくのか、技術もさることながら、最終的に勝敗を決めるものは戦略や戦術などが大きな部分を占めることから、このような設問への回答の仕方を見ることによって受験者の頭脳の働きを見ようとしているものです。 それでは設問90の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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