その100 |
道を聞く質問の仕方を考える |
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当連載も100回目を迎えました。 では、解説に移ります。
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まずこの設問を見た瞬間に、いったい何のことか、何を言っているのか、さっぱりわからなかった方たちも多かったのではないでしょうか。 「ヒントとしてこの問題は、グーグル社の出題であることを背景に考えると解け易いかもしれません」とのコメントを、ちょうど前号のこの設問欄のすぐ前に残しておきましたが、グーグル社の面接試験問題の中には、見た瞬間、わけのわからなさで面食らうものや、その意図がさっぱりわからないものなどが、ときに出題されます。
IT分野に進む青い目の受験者の中には、俳句とは何かすらも知らない若者も多くいるはずなのに、検索量の季節変動を予測できる方法を俳句にせよ、だと? 我が国の俳人も絶句しそうな問題で、残りの2題についても、内容の分野は違うものの、大同小異ではないでしょうか。 グーグルの各部門や事業所単位で作られているこれらの面接問題は、本来の意図を離れて、問題を作る出題者自身の趣味趣向が織り込まれている感も否めなく、昨年の2013年、6月20日付けのニューヨークタイムズには、グーグルの人事担当上席副社長を務めるLaszlo Bock氏がそのインタビューに応え、グーグルの面接試験問題の中には、質問者の自己満足に終わるだけのものがあるようだ、と述べていましたが、この3例はその種の範疇に入るものではないでしょうか。 もちろんたくさん出題されている問題の中には、一見、この類のものではないかと思ってしまうような設問もありますが、実は、冒頭で述べたいわゆる地頭力を見ようとしているものが多いのです。 たしかにこの設問100も、一見して面食らってしまうような問題であることから、質問者の自己満足に類するものではないかと疑ってしまいそうですが、実はしっかりとした出題意図や背景が込められています。 まず、B地点に行かねばならないという部分はわかりますので、解答の1つにはスマートホンで地図検索をする、などというのがありそうです。たしかにこれで間違ってはいませんが、これこそ誰もが簡単に答えられる問題で、受験者の深い思考を見るための面接試験でわざわざ出題するような設問ではなく、出題者側はそんな解答を望んではいないはずです。電話を利用して聞き出す、という手もありますが、同様です。 では一般的に考えてみるとどうなるか。まず、その経路は1つに限らず複数通りあるのが一般的だ、ということでしょう。 しかし当設問では、あなたが目的地のB地点の近くにきていることなどには、一切、言及していません。 そこで「またまたビル・ゲイツの言う「よ〜く考えよ」です。 ということは、この逆を順々に辿っていけばB地点への道がわかるということです。つまり、たとえあなたがb、c、d・・・からずっと離れていても、b、c、dの返事があなたに帰ってくるような質問の仕方を考えればいいということになるわけです。 「入れ子」については、当連載のその49回・村の女王で、そのよい例を見ましたが、当設問100の場合はこうなります。 そこで前に述べた「この問題は、グーグル社の出題です」というヒントですが、なぜこのようなヒントを出したかと言いますと、実はこのやり方は、情報をやり取りするインターネットシステムに似ているというよりも、そのものだからです。 ご存じのとおりグーグル社は、インターネット上で目的の情報がどこにあるか、その情報の住所を探し出す検索ソフトの開発で起業した会社です。 ちょうどいい機会なので、ここでこの設問と関連する部分としてインターネットの仕組みにつき、ごくごく簡単に解説してみます。 検索では、その目的情報が格納されているネットワーク上の住所(サイト)を見つけ、結果、その住所のところまで行って情報を引き出して閲覧することになります。またメールシステムは、相手の住所とメールの送受信をする機能ですが、ネットワーク上であるがために、自分と相手の住所間の経路は幾通りもあることになります。 このインターネット上のネットワーク網に直接接続されていて、ホームページを蓄えていたり、メールの郵便局の役割を果たしているコンピューターをここではサーバーと呼ぶことにします。あなたのプロバイダーはこのようなサーバーを設置しているところです。 したがって自分と直接繋がっていない遠くにあるサーバーがどこにあるかはわからないわけで、結果、これら直接繋がっているサーバー同士を順繰りに辿っていくことにより、やがて目的の住所を管理しているサーバーに辿りつくという仕組みになっています。 この仕組みが当設問の解答と非常によく似ていることがおわかりだと思います。 なぜ、個々のサーバーがインターネット上の全体の経路について、あらかじめ把握していないのかと申しますと、サーバーの数が膨大であるばかりでなく、新規あるいは削除サーバーの更新などに伴うネットワーク情報管理が煩雑極まりないこと、また途中の経路が混雑していたり、トラブルで使えなかったりしたときに、あらかじめ固定的に設定していては、その都度、臨機応変に対処することも、極めて困難になるからです。 そうは言っても、目的の住所に辿り着く経路は幾通りもあり、その都度順繰り辿っていくのは時間がかかってしょうがないのではないかと思われるかもしれませんが、たとえば、グーグルで「アメリカ」という言葉を検索すると、1秒以内、たったの0.33秒という瞬時に、その資料の載っている87,600,000件もの住所を探し出してくれる現状なわけですから、かかる時間は誤差の範囲にも入らないということです。 また、経路がたくさんある中で、どの経路を選ぶかは、リンクの帯域幅や信頼性などに重みを付けて算出した値を使うものもありますが、通常は経由するサーバーの数が最も少ない経路を選びます。 またメールは或る単位の長さにブツ切りにされて、つまり小包(パケット)として発信され、ネットワーク内をバケツリレーのように転送されて、相手の宛先まで各小包は一緒にまとまって運ばれるときもあれば、経路の混雑状況によりそれぞれバラバラに異なった経路を通って相手に届くこともあります。バラバラで到着したメールは到着先のサーバーで、もとの形に組み立てられて復元されるようになっているわけです。 なぜ、ブツ切りの小包の形にするかといいますと、回線を効率よく使えるからです。それはアナログの電話回線の場合を想像していただければ分かりますが、その回線が通話中の場合、アナログでは独占されていて他の人は使えません。 ようやく一般にもメールやホームページなどでインターネットという名前が普及し始めた2000年ころに、電気店にきて「インターネットをください」と注文をするお客さんがいたようです。今では笑い話になってしまいますが、当時、インターネットという「モノ」があって、それを買えば使える、と思う人もいたのでしょう。 さて、当設問の背景は、少し戸惑うような設問という印象を受けても、落ち着いて問題にとりかかれるかどうか、その上、本稿で解説したような論理思考によって入れ子のような質問にすればいいという発想ができるかどうかを見ようとしているものです。 それでは設問100の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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