その114 |
通貨経済の仕組みを考える |
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正解そのものはないものの、どのような考え方でもって最終的な数値を推測していくのか、その論理的なプロセス過程を見ようというものがフェルミ問題ですが、前問もまさにその設問でした。
それでは今号の設問に入ります。 |
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海外旅行を経験されている方の中には、この設問を見て咄嗟に「どうして延々とビールを飲み続けられるのか」という疑問を持たれた方も多かったかもしれません。 というのも、通貨の両替をする度に、その売り買いにおける両替レートの差や、手数料なども差し引かれて、その価値はどんどん目減りしていくことを体験されているからです。 同じ日本の国内で1万円を米ドルに替え、またその替えた米ドルをその場で、そっくりそのまま日本円に替えるとしたら、また1万円に戻るわけではなく、9千何百円かの金額になってしまいます。 もちろんこの設問の貨幣価値の差は、現実に起こっている数値を引用しているわけではありません。 解説に入る前に、一言。 では解説に入ります。 今度は、その1カナダドルを持って、1USドル=90カナダセントのカナダ側に入り、1杯10カナダセントのビールを注文してカナダドルで支払えば、そのおつりは90カナダセントになりますから、それをUS ドルでもらうとすると、「1USドル=90カナダセントのカナダ」の出題文のとおり、1USドルになるということです。 |
そしてこの後、この1USドルを持って、またアメリカ側に入って同じようにビールを注文し、同じようにおつりをもらえば、出発時点と同じことになり、したがって国境を行き来する度に、その繰り返しになって延々とこの行動が続けられるということです。 でも、疑問が湧いてきます。 |
「ただでビールを飲み続けられる? そんなうまい話はこれまで聞いたことがない? しかし前述したとおり、設問のような貨幣価値であるかぎり、話の展開は理路整然としていて、どこにもトリックのようなおかしなところは見当たりません。 つまり、カナダにはカナダドルを持ち込み、アメリカにはUSドルを持ち込むといった、より需要の高い場所、より価値が高くなる場所へ貨幣を持ち込むその経済活動の結果、その代償としての対価がビールであったということになるのです。 |
しかし、もしもそういうことなら、ということで皆さんの中にはさらに深く突っ込んで、次のような考えを進める方もいるかもしれません。 |
確かに両替だけを考えれば、そのとおりになりそうです。 |
そして次に1USドル=90カナダセントになるカナダへと、この1.11カナダドルそっくりそのままを持ち込み、今度はそこですべてUSドルに両替しますと1.23USドルになるわけです。 |
なぜか。まずはパブを初め、両替だけをしてくれるような一般のお店はありません。 |
しかしお店でもなく、金融機関でもない、しかも設問のような貨幣価値の差があって、一般の人が気軽に両替ができるようなところはないのか。 |
でも、ホテルの両替でこのような利益になりそうな話が可能なら、実行する人がいてもよさそうなものですが、これもまたいないようです。 |
つまり、行き来にかかる必要経費や労力、そして消耗する体力などに支障をきたさないというのが条件になりますが、これもやはり現実的ではないようで、いずれにしても以上のような形での儲け話は難しいということです。 |
では、設問にある「このようなことを延々と続けられるのでしょうか」という質問にどう回答するか。 この出題背景は、通貨経済の基本的な仕組みを理解できるかどうか、あるいは理解しているかどうか、また深い思考という点から、行動に係わる経費、労力、体力までを考えて、最終的につり銭のことまでに考えが及ぶかどうか、を見ようとしているものです。 |
では解答です。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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