その19:先入観を捨て、視点を変えて見る |
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前回の設問は、これまで見てきたのものとはずいぶんと違っているという印象を持たれた方も多いと思いますが、1938年にノーベル物理学賞を受賞したイタリア人・エンリコ・フェルミ(Enrico
Fermi)が亡命先のアメリカで、シカゴ大学の学生らに出した問題、「シカゴにいるピアノの調律師は何人いるか?」が原点となっています。 さて、今回は等分する設問ですが、その背景は何なのでしょうか。では解説に移ります。 |
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異質玉の入っている箱を当てる前々回の設問17と同様、この問題でもおそらくすぐにわかったという人が多いのではないでしょうか。いかがですか。すぐわかったという皆さんは最終的な解答を見て、今度は以外なところに人間の盲点があることに気づかされると思います。やはりすぐにわかるような設問に対しては、何かあるのではないかと疑って取り掛かる必要がありそうです。それでは長方形の形をしているケーキの代表としてカステラでも思い浮かべながら次に進んでください。 まず、すぐわかったと思われる解答についての解説です。 この設問は、ケーキを真上から見た場合、図1のようにその一部が無作為に長方形状に切り取られている状態を意味しています。そして課題は、包丁を一直線に入れてこの残されている色付きの部分を二等分せよ、ということです。 ここまできて、これ以外に解答があるのか?、との声が聞こえてきそうですが、ここで設問17の解説を思い出してください。システム設計やプログラミングに関連した仕事に従事している方たちに望まれるのは、最短時間で処理できるような最少のステップで済む設計やプログラミングで、さらに簡易で確実な方法があるのなら、ビル・ゲイツはそれらの解答を望んでいるということです。実はこの問題を違う方法で9歳の少年、つまり普通の小学生が解いてしまったという点に注目です。 それでは続けます。ヒントは設問が単なる長方形の問題ではなく、ケーキということにあります。つまり平面ではなく、立体物の二分という点です。すると密度のあるものの二分になります。そこで蒸留水の氷などのように、密度が均一なものならばまだしも、対象は密度などはバラバラのケーキです。このようにバラツキのあるケーキを二等分することなどはますます難しくなるだけで、小学生がどうして解けるのか疑問が増してくるだけです。
しかしバラツキのある密度のものでも、もしもその重心がわかったなら、そこを通る任意の平面で切ることにより重量において二分することはできます。が、今度はどうやってそのケーキの重心を見つけるのかが問題です。最新のあらゆる現代技術や機器を駆使したとしても、現実にバラツキのあるケーキの中の重心位置を特定することは、さすがにまだ無理のようです。さらにたとえその位置がわかったとしても、どうやってそこに基準点の印をつけて切り目を入れるのか、ここまで考えると小学生はおろか、もはや大人といえどもお手上げです。ビル・ゲイツといえどもそこまでは考えていないはずです。
この設問を前にしたとき、すぐわかったという皆さんはビル・ゲイツが出す問題だからという先入観が入っていませんでしたか。この先入観があるとどうしても幾何学的な発想とともに難しく考えてしまいがちになるものです。角度を変え素直な見方をすればもう一つの解答に至ります。つまり平面の問題ならば、まさに図2が100%の正解です。が、しかし問題はわざわざケーキ、立体物としていることです。幾何学的な発想で物を見るとどうしても平面から先に入ってしまい、幅があるという点を見逃してしまうのです。 そうです。図3の赤線のように切り目を入れれば、まさに二分できます。答を知って、な〜んだということになると思いますが、このことを「そんなことだったら」と軽く考えないことです。
冒頭に解説した解答が不正解ということではありませんが、この出題背景として、先入観が邪魔をしたり、おうおうにして、いろんな知識があると難しく考えすぎてしまいがちになるところを、現実に即して、ときには白紙に戻ってあるいは初心に帰って考えることを忘れてはいけない、があるのです。さらに、一つの方法だけで満足せず、他にもないか視点を変え、常に注意深く見ることの必要性もまた示唆しているわけです。 |
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実際、この2つとも解答をした応募者が合格だったようです。 |
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余裕のあるかたは、次の設問もどうぞ。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
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新聞、雑誌インタビュー 多数
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