その22:極端なケースとひらめき |
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数学や物理学を応用しながら問題を解いていくその考え方や思考の過程を見ようとするもの、あるいは枠にとらわれずに導きだした答に対する説得力を見ようとするもの、さらには創造的発想の有無をさぐるもの、その他多々、これまで20あまりの設問を見てきましたが、それらとは違って前回は、「まさか、氷の重さを推定する過程で、回答者の安全意識やコスト経済意識を見ようとしているとは」と思った方も多いのではないでしょうか。 では、次の設問はどうでしょうか。 |
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この設問を見て、「これはビル・ゲイツが出題した設問ではないのではないか、日本の貨幣の名称を使うはずがない」と思った皆さんもいると思います。 しかし一方、この連載「あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか」の巻頭その1でご紹介した設問サンプルには「富士山を動かすのにどれだけ時間がかかるか」が出てくることや、毎回出典案内に掲載しているように、原書のタイトルまでが日本の富士をテーマにしている「HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? 」になっていることなどから、日本語の名称が出てきても、別段、違和感を感じないという方もいるかもしれません。 実際のところ、この設問では先方のコインを使っていました。それはQuarterと呼ばれているコインで、25セントです。しかし米国では非常にポピュラーな25セントといっても、日本の皆さんには馴染みが薄いことや、たとえそれを日本の貨幣にしたとしても問題の本質が変わるものではないことから、一番それに近いと思われる日本の10円玉にしたもので、あくまでも当設問のオリジナルはれっきとしたビル・ゲイツの面接試験問題です。 では解説に入ります。 まず、先手として最初にコインを置ける場所は無数にありますが、どこか特長のある位置があるとしたら、四隅です。特異とはいえなくとも、目立つ場所です。しかし四隅ということは、交互に10円玉を置いていった場合、相手にも必ず置く場所があるということになり、このような形で自分が先手だと負けてしまいます。
広いテーブル上でこの四隅のことを延長して考えますと、自分がどこに10円玉を置いたとしても、相手には必ず置き場所がありそうで、頭の中が混乱してきます。つまり、テーブルの中心点をはさんで、自分が置いた10円玉の位置と点対称の位置に、必ず相手も置いていけますので、最終的には結局、相手が勝つことになってしまいます。 さて、当シリーズのその19、「先入観を捨て、視点を変えて見る」を思い出してください。また、たくさんのやり方がありそうな場合、その糸口になるのが「極端を考えるひらめき」だとして赤白玉の取り出し方の確率問題のところで解説したその7を思い出してください。 設問ではその大きさについては何も言っていません。だから並べる10円玉をできるだけ少なくする極端に小さなテーブルで考えてみます。また、テーブルには升目が入っていませんが、分かり易くするため10円玉を置いたところに、頭の中でそのサイズの升目を描いてみます(図1)。そうすれば、他の10円玉に触れないという条件はその升目をはみ出さないということと同じになりますから、このことに注意しながら考えていきます。
以下10円玉を硬貨と呼んで説明してまいります。まず、硬貨が2個までは置けない、つまり1個なら置ける一番小さなテーブルだったら、問題なく先手の勝ちです。(図2)
さて次に、横1列に3個は置けないが2個までなら置ける少し長いテーブルだったらどうか、これが問題の突破口、核心に触れるヒントを与えてくれそうです。というのも、あとは10円玉の個数が増えるだけの繰り返しになる、と思われるからです。 この戦略を考えていきますと、それは先手升の両端に残るスペースを同時に最小にすることしかないことがわかります。というのも、もし片方に残るスペースを縮めようとすれば、もう片方のスペースはその縮めた分だけ広がってしまい、この広がったスペースに相手の置き場所が充分できるようになるからです。
ここで前述の青色太文字部分で、「先手のほうでまねるような立場にもっていけば勝てるというヒントを覚えておいてください」とコメントしましたが、それを思い出していただくと、あとは簡単に解けそうです。
ここまで横1列に貨幣を並べるテーブルで考えましたが、これを拡大して幅のある普通のテーブルを考えても、テーブルの中心を点対称にして同じような方法をとっていけば、まったく同様の結果が得られることは容易にわかります。 では、他の戦略はないのか。この問題を突き詰めていけば、つまるところ対称がカギとなっていることがわかってきます。したがって、これ以外の解答は見つかりません。ただし、正解に至るスピードという点で断然違いが出てくる考え方があります。 もうおわかりのように、この出題の背景は「先入観を捨てることと、いくつも方法がありそうな場合には極端なケースを考えてみる」ということですが、「相手がまねのできない場所」というこの「考え方・ひらめき」も、その解答に至る時間の短さという点で応募者の力量を見るための参考にしようとしているものです。 では解答です。 |
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では次の設問を考えてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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