その43 隠れた規則性の見極め |
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この3月11日に米経済誌「Forbes」が発表した2009年の世界億万長者番付では、2007年まで13年連続の1位で、昨年は3位だったビル・ゲイツが、再び首位に返り咲きました。 |
当欄「その36」の冒頭でも紹介しましたように、ビル・ゲイツは昨年の7月に第一線を退き、世界の貧困をなくそうと自分の慈善事業財団に自分の資産の95%以上を寄付する形にして活動を始めていますので、このような観点から見てランキング上位であることは望ましいことと思います。ちなみに日本人の中で1位はユニクロの柳井正氏で、世界ランキングでは76位でした。 |
さて、前回のミシシッピー川の流水量の設問には面食らった方も多かったと思いますが、小型フェルミ推定の問題として、設問にどのようにアプローチをして解いていくか、応募受験者の思考過程を見ようというものでした。 では、今号の設問は何を意図しての出題でしょうか。解説に入ります。 |
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トグる(Toggle)などという日本語はありませんが、スイッチのつまみを上下するとか、オン、オフにするとかのときに使われる英語です。 そこで今回の最初の突破口、糸口、手がかりを見つけ出す過程ですが、これは面接試験の場で出されている問題だという点を考えることです。 それでもルールにしたがって、1ステップずつ順次トグるのをロッカー1からロッカー100まで具体的にやっていけば、もちろん解答には辿りつけますが、前述のように面接官はそこまで待っていられるほどヒマではないことと、また、そんな解き方は見たくもないと言われてお仕舞になるはずです。 最初、解くのがいやになるとの感を少しでも持った方は、おそらく目くらましのような仕掛けについついひっかかってしまい、笛の合図の都度、1番から100番までのロッカー全部を対象にして見ていかなければならない、と考えた人だと思います。 この種の問題は暗算でやるよりも、メモ上に書いてみて進めるほうが早くて確実です。これまで出題された設問をみますと、中には途中でメモや走り書きをしながら計算をするといった場面も想定されます。したがって面接会場には筆記用具か白板あるいはフリップチャートなどが用意されているはずですが、もしも用意されていないならば、面接官にメモ用紙などを頼めば必ず応じてくれるはずです。 では、トグるごとに各ロッカーに○印を付けながら、最初の1番から10番ロッカーまでをやってみて、法則の有無を検討してみます。トグることがポイントですから、まずこの際、開閉を気にしないで、とにかくトグるロッカーだけを見ていきます。 当然、この後ロッカーが100個あるとして続ければ、11回目の笛では11、22、33、44・・・番目の、12回目は12、24、36・・・番目のロッカーだけが関係することになります。
各ロッカーに印がつきましたから、ここで初めてその開閉状態がチェックできます。最初はすべてのロッカー扉が閉まっていますので、1回目の動作、つまり最初の○印で開き、2回目の○印で閉じ、3回目の○印でまた開き・・・となっていくことから、動作の○印が奇数回なら開いており、偶数回なら閉じていることになります。 さて、ここまできて1、4、9の数列を見れば、もはや大部分の皆さんは気づかれるはずで、これらは12、22、32というきれいな形で表せます。ですからあとはこの形が続くと考えればよいわけで、100個のロッカーの場合はこれらが100を超えない範囲で考えればよく、42、52、62、72、82、92、102と、表3のようになることがわかるわけです。 もちろん出題者側は1、4、9の数列を見ただけで、12、22、32のような規則性を発見する受験者を望んでいるわけですが、次の1、4、9、16まで進めればもはや誰でもこの法則がわかると思います。 トグられるロッカーというのは、自分の番号を割ることのできる整数です。これをその番号の因数と呼びます。ロッカー12番だったら、12を割ることのできる整数1、2、3、4、6、12がその因数で、言い換えれば、その番号のときにトグることができ、その回数はこの因数の個数になりますから、全部で6個の偶数回です。 ところが因子が奇数個の場合は、そうはいきません。どれかの因数を2回使わなければなりません。具体的に言いますと、問題の扉が開いているロッカーでは奇数回のトグりが必要ですから、因数の数も奇数になります。ロッカー9番では1、3、9の3つの因子です。12の場合と同様に、この場合のそれぞれの因子で9を割ると1x9、3x3ですが、奇数個ある因子の真ん中に位置するこの3という因子だけはどうしても2回使わないと9というロッカー番号にならないということです。 一見、複雑そうな印象を受け易い設問ですが、そこは落ち着いて受け止める資質の受験応募者か、そしてその中でもいかに早く問題の規則性を見つけ出す能力の持ち主かを見ようというのが、設問の背景です。 では、解答です。 |
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それでは、出題の背景を考えながら、次の設問をやってみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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