その52 常に深くスマートな論理思考力で |
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設問49の「50組の夫婦」の問題と、前回の「海賊による100枚の金貨配分」の問題では、1人の人間から見て、「自分以外の人たちはどう考えるか」を見る手法、つまり「他の人間の思惑」を考える論理手法により解答を導き出すことができました・・・がしかし、前回の回答を見て「へんだぞ?」と疑問に思った方はいませんでしたか? マイナス二進法の設問12や、両皿天秤で軽い硬貨を特定する設問33、そして鏡の左右逆転理由を問う設問36で、皆さんの地頭力思考がどのように働きどこまで進んでいたか、時間を置いたあとで振り返ってみていただくために、そこでの説明を意図的に控え、それぞれその次の回の「その13」「その34」「その37」で突っ込んだ解説をしました。 本来の設問の原文は次のようなものです。 |
変えたポイントは「全員で投票する」というところを、「残りの海賊はこのプランに投票する権利があり・・・」と、表現を少し変えてみた部分です。 したがって、過去、これと類似した問題に慣れていた方たちや、あるいはおぼろげながらその残る記憶から全員投票と解釈して当設問に取組んだ人たちのことを考えたのが1つと、またこれからご説明する新たな解答と比較対照していただけるならばと、あえてこのオリジナルをベースにした基本的な解き方・道筋を、まずは前号でご披露したわけです。そして皆さんにはもう少し深く考えてみていただく機会にしようと、そのヒントの意味で表現をそっと変えてみたわけです。 マンホールの蓋やビール缶のすぼみの問題など、ビル・ゲイツは物事を常日頃注意深く見ているかどうか、そこを試す設問もよく出題しますが、当設問のオリジナルを知っていた人たち、あるいは知らなかった人たちも含めて、皆さんの中には設問を注意深く読み、提案者を除いたケースで回答を試みた方たちも多くおられたかと思います。 それでは残りの海賊だけの投票による解答です。この内容で解答を試みられた方たちの中には、最後の答を見て「しまった」と思われる人もあるかもしれません。もちろん正解は全員投票の場合と違ってきますが、金貨分配の条件はまったく同じで、賛成投票が半数およびそれ以上なら提案者は殺されず、また提案者がより多くの金貨を獲得できるような分配の方法を求めるというものです。 最初の突破口・糸口としては、やはり前回同様、極端に人数を減らしたDとEの2人だけの場合から考えます。この場合、残りの海賊はEだけですのでEの意のままで決まりますから、D(0)、E(100)の内容で決着です(2人の場合)。ここで重要なのは、Eがたとえ金貨100枚全部もらっても、もしも彼が反対したらDは殺されるという境遇にあるということです。 これではDはたまりませんから、Cが生き残るような投票をしようとするはずです。 |
結果、3人だけが残るようになったらこれでお終いになります。だからDやEは、1枚でも金貨にありつけるよう、3人だけにならないための投票を考えることになるはずです。 |
そこで5人の場合のAは、このCの賛成を得る手立てとともに、さらにもう1人の確実な賛成票をもくろむことになります。そのもう1人とはDかEのどちらかの買収ですが、4人の場合の分配としてB(98)、C(0)、D(1)、E(1)でしたから、DもEも同じ状態なので同じ条件で動くはずです。 これまでもいくつか見てきましたように、或る設問をさらに突っ込んで深く考えてみると、地頭力を一層働かすことができるような深遠でスマートな問題を創造することができるというサンプルです。 さて、少々スペースを取ってしまいましたが、では次の設問の解説に移ります。
7等分の切れ目が入っている延べ棒を2ヵ所で切断するとしたら、一体、どれだけ違う組合せの分断ができるか。結果は図1のように、7等分の一片のものが2つと、5片つながりのものが1つとなるケース1、そして一片のものが1つと、2片つながりのものが1つ、4片つながりのものが1つとなるケース2、さらに一片のものが1つと、3片つながりのものが2つとなるケース3、そして2片つながりのものが2つ、3片つながりのものが1つとなるケース4という4種類だけです。 この4種類の分け方のうち、どれを使ったとしても毎日1片ずつの断片を従業員に渡すことができないのは明らかです。だから、毎日1片ずつ相当の価値を渡し、さらに7日を終わった時点でこの延べ棒を全部渡し切る方法を考えよということであれば、どうしても或る方法しかありません。 そこで「お釣り」をもらうということで考えます。従業員には初日から順に7日まで、延べ棒1片を1単位として、毎日1単位ずつ渡せるような分け方を考えればよいわけです。つまりこの設問は、4種類の分け方でできる単位を使い、その加減算の結果、毎日1単位ずつ渡す格好にできるのはどの分け方か、という問題と同じことになります。 |
加減算で・・・となれば、もはや数式を考えればできるはずです。分け方で1単位の断片もできないケース4は最初から除外です。そこで残る3ケースで、従業員に渡す断片とその手元に残る断片(青色)と、そのときのお釣りとなる断片(赤色)を、数式に展開し、どこまでできるかをやってみればわかります。 当設問の背景は、お釣りをもらうという考え方も含めて、毎日渡す1単位のものをどのようにして作ればいいかという論理思考のスピードを見ようというものです。 それでは正解です。 |
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それでは、やはりその設問の背景を考えながら、次の問題をやってみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
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連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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