中が見えない箱の中に入っている玉や物の状態を判別させたり、その確率を求めさせたりする問題は、偽りのラベルが貼ってあった箱の設問8や、1回の重量測定だけで違う重さの玉が入っている箱を当てさせる設問17、さらにはまた、1ドル札が封印された箱の組合せで、どんな指定金額でも出せるようにするという設問48などがありましたが、今号の設問は直感で考えるとつい間違えてしまいがちな要素の含まれている問題です。
その間違いを犯し易いところとは、すでに見ていただいた設問46の「2人の子供を持つ親がいて、そのうち1人は女の子であるとき、もう1人の子も女の子である確率はどれだけか」という問題でわかりますように、次に生まれた子が男か女かなど、当然2分の1の確率に決っているという直感です。しかし正解はそうではありませんでした。
また、設問50の「1枚は両面が白、1枚は両面が黒、残りの1枚片面が白で片面が黒である3枚のカードの中から1枚を取り出すと白面が出た場合、その裏側も白である確率はどれだけか」という問題でもそうであったように、直感という普段の感覚的な思いが大きく前面に出てくると、つい間違えてしまうというものです。
では解説に入ります。
まず最初に、普段、何事にも注意深く問題と取組んでいる人とそうでない人との差が出てくるところがあります。それは、設問をどれだけ注意深く読んでいるかというところです。
この設問で、まず初めに出てくる問いは「最初に中から2個の玉を取り出したとき、それらが同じ色の玉である確率はいくらか」となっていますが、玉の取り出し方次第によっては、その確率もガラリと違いが出てくるということです。つまり、ここでの玉の取り出し方が「同時に2個」なのか、そうではなく「1個1個順番に2個」なのかが、はっきり示されていないことです。
これが出題者側の意図的に仕組んだ出題の仕方なのか、あるいはうっかりとした不備によりそうなったものかどうかがわかりませんので、このような場合には、あり得るすべてケースをあげて説明することです。
意図的な場合はもちろんですが、不備と思われるようなケースの場合であれば、このような説明の解答は受験者の思慮深さを面接官に訴える絶好の機会として、合格へと大きく後押ししてくれるはずです。
では、「同時に2個」の場合と、「1個1個順番に2個」の場合、その確率の違いを見ていきますが、このような問題のときは設問50で解説したように、あらかじめ対象それぞれを区別できるように記号付けをして始めると、一層わかり易くなります。

図1 |
そこでまず、図1のように2個の白玉それぞれをAとB、同じく黒玉2個それぞれをCとDとします。
そこから「同時に2個」を取り出すとすると、そのあり得るすべてのケースは、白A白B、白A黒C、白A黒D、白B黒C、白B黒D、黒C黒Dの6つの組合せです。この中で同じ色の玉の組合せは白A白B、黒C黒Dの2通りですから、同じ色の玉を取り出す確率は2/6、つまり1/3ということになります。
では「1個1個順番に2個」取り出す場合はどうか。
今度は起こり得るケースが増えるということです。たとえば、最初に取り出した1個が白玉で、次にもう1個取り出したらそれも白だったとします。同じ白2個でも、先の「同時に2個」のときは1ケースだったものが、この場合、最初の1個が白Aで次の1個が白Bであるケースと、最初の1個が白Bで次の1個が白Aであるケースの、合計2ケースが存在するということです。
つまりこの場合、同じ白2個でも順番が違えば、それぞれ違う組合せとして数えなければならないということです。

図2 |
したがってこの場合の起こり得るケースは、図2のように
白A白B,白A黒C,白A黒D,白B白A,
白B黒C,白B黒D,黒C白A,黒C白B,
黒C黒D,黒D白A,黒D白B,黒D黒C |
の12ケースであり、そのうち同じ色の玉である組合せは4通りとなり、したがってその確率は4/12個、つまり1/3になります。
では、次に質問されている課題「今度は1個を取り出したら白玉でした。残る3個の中からもう1個白玉を取り出す確率はいくらか」の場合はどうか。
この場合は、明らかに1個ずつ取り出すことが示されていますので、今度は先に見た起こり得る12ケースの中で、1個目が白玉のケースの場合をあげてみますと、図3のように、
白A白B,白A黒C,白A黒D,白B白A,白B黒C,白B黒D |
の6ケースです。この中で2個とも白玉となるのは2通りですから、その確率は2/6、つまり1/3となります。これまでの課題では、結果的に同じ確率1/3になりましたが、最後の課題ではどうでしょうか。

図3 |
では、最後の課題「再度2個取り出したところ、そのうちの1個は白色でした。もう1個も白色である確率は」では、再び「同時に2個」なのか、「1個1個順番に」なのか明示されていませんので、これも別々に見る必要があります。
まず、「同時に2個」を取り出したとすると、その組合せは先に見た白A白B、白A黒C、白A黒D、白B黒C、白B黒D、黒C黒Dの6つの組合せで、その中で課題に合致する2個とも白玉となるのは1通りです。したがってその確率は1/6です。
では、「1個1個順番に」の場合、その組合せすべてのケースはおわかりの12ケースです。その中で、少なくとも1個が白玉の場合は,図4のように
白A白B,白A黒C,白A黒D,白B白A,白B黒C,
白B黒D,黒C白A,黒C白B,黒D白A,黒D白B |
の10ケースですが、この10ケース中で2個とも白玉になるのは2通りです。したがってその確率は2/10、つまり1/5の20%ということになります。

図4 |
以上ご覧いただいたように、2個の玉を取り出すだけでも、その確率は1/3、1/6、1/5と、変化に富んだ結果になることがわかります。
当設問の出題背景は、設問46や設問50と同様に、あくまでも直感には頼らず、また見落しがないよう気をつける資質の持ち主かどうかということともに、問題を注意深く読み込むことができるかどうかも見ようというところにあります。
それでは解答です。
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