その64 要求される回答次第では、具体的数値を入れてみる |
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同じ濃度で2つのコップに入っているリンゴジュースとミカンジュースをスプーン1杯分入れ替えたとしたら、感覚的にそれぞれの濃度に差が出てくるように思えますが、ジュースやミルクあるいは紅茶やコーヒーでも、それぞれ2つのものがまったく同じ濃度で同じ量だけコップに入っていれば、事前に中身を均一にかき混ぜようが混ぜまいが、スプーンやサジで何回入れ替えようが、最終的に元のコップにある全体量が変わらないかぎり、それぞれのコップにある互いの量は等しくなる、ということを前問で見ていただきました。 では解説に入ります。
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さて、この問題を見て、最初に皆さんはどう思われたでしょうか。 では具体的な解説に入ります。 まず、B車の一定速度を時速X kmとしますと、100km進むのに要する時間は100/X時間。またA車の場合、前半50kmは時速X+10kmで、後半50kmはX−10kmになりますから、100km進むのに要する時間は50/(X+10)+50/(X−10)時間です。
このA車の時間は通分して[50(X−10)/(X+10) (X−10)]+[50(X+10)/(X−10) (X+10)]=100X/(X2−100)となります。 ここに出てきたAのX2/(X2−100)は、分母が分子よりも必ず小さくなり、常にこの値は1よりも大きな数値になりますから、結局、100km進むのに要する時間はA車のほうが常にB車より多く時間がかかることになって、B車のほうが早く100km地点に着くことがわかります。 これは数式だけを見ていることから出てくる問題で、現実の問題に返ってみれば、分母が0となるXの値 10とはB車の速度が10の場合で、そのときA車の後半の速度は10−10=0、つまりA車は止まっている状態を意味するわけです。 これで、一応正解がわかりました。もちろんこの方法で解いてもかまわないのですが、もしも紙とペンがないならば、暗算で解くには少々困難が伴うはずです。 そこで走行に要する時間をわかりやすい値にするため、半分の50kmをB車が1時間で走行できるよう、その時速を50kmと仮定します。するとA車の時速は前半が50+10=60km、 さて2台の車は、一見、速く進むペースと遅く進むペースで相殺されるように考えられがちですが、なぜそうならないのか、ここで検証の意味も含めてその理由を見てみたいと思います。 具体的な数値を使ったほうがわかりやすいので、前述で用いたB車の時速を50kmとして説明します。 したがって、スピードが速いほうで比べても1.25倍>1.2倍と、B車はA車より速く、また遅いほうで比べてもそのスピードは0.833倍>0.8倍と、やはりB車がA車より速い、という結果になることがわかります。 たとえば表1で、スピードが速いほうとして50/40(=1.25)と60/50(=1.2)を比べ、またスピードが遅いほうとして40/50(=0.8)と50/60(=0.8333)を比べました。 つまりB車の一定速度や両者の速度差がどのような値であっても、両者の分母分子の差は同じとなり、それらを比較した場合この仮分数と真分数の結果により、必ずB車のA車に対する値が大きくなることから、B車のスピードのほうが速いということになるのです。 一見、速く進むペースと遅く進むペースで相殺されるように考えられがちな当設問の出題背景は、冷静な判断力の有無と、やはり論理的な思考力および素早い計算力を見ようとするものです。 それでは解答です。 |
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それでは次の問題をやってみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
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新聞、雑誌インタビュー 多数
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