その68 直感はおうおうにして間違うことが多い論理問題 |
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前号の暗号の設問では、エピソードとしてご紹介した第二次世界大戦におけるエニグマ(Enigma)やミッドウェイ海戦での、相手を欺く「おとり情報」作戦の話に興味を持たれた方も多かったようですが、その設問の背景は、単一的なものの見方をする人にはなかなか解けない問題として、日常、柔軟な考え方ができるかどうかを見ようとするものでした。 さて今号の設問はいかがでしょうか。それでは解説に入ります。
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この設問を見た瞬間、別々の日に、20キロメートルもの長い距離の中のたった1点を同時に通りすぎる可能性などあり得るのか、と思われた方も多かったかもしれません。 たしかに距離と時間を考える問題には違いないのですが、よく考えないと、落とし穴にはまってしまう類の問題です。 その1つ、まず「同じ場所」という考え方がパッと先に出てしまうと、その次にその場所への時間を考えることになります。そしてスッ〜とこの時間ということを考えに入れた途端、歩く速度は一定ではないという壁にぶつかります。 つまり、自宅と叔父さんの家の間では、早足の時もあれば、途中、何かを見て立ち止まったり、長い道のりでは休憩することもあるはずで、だからその歩む速度がバラバラである以上、同じ場所を同じ時刻に通過することなどはないに等しいとして、この両者では、そんな場所はあり得ない確率、と感覚的な考え方をしてしまうことになります。 これは、最初に場所を決めてしまうと、時間が合わなくなり、逆に時間を先に決めてしまうと、場所が合わなくなるという日常経験することを、ごく直感的に頭の中に描いてしまうために起こる現象で、そう考えてしまうこと自体は決して間違っているわけではありません。 お気づきかと思いますが、設問の中にある数値に関して、この両者の考え方・回答には一切の考慮がなされていません。そんな数値など考慮しなくても、歩く速度がバラバラなのだから、最初から答は決まっているではないか、との反論を受けそうですが、ポイントはその数値といっても、距離の20キロでも、その間にかかる10時間でもなく、その時間帯なのです。 どういうことか。図でもって説明しますと一層わかり易いので、図1を見てください。 こうして、行き帰りがバラバラの速度であっても、出会う場所が違ってくるだけで、いずれにおいても「同じ時刻」に出会う場所があり、設問で問われている「同じ時刻」に通る場所は100%存在するということがわかります。 まず、A君の到着時刻がA’君の出発時刻より早い場合。このケースでは、すでにA君は全行程を終えてしまっているわけですから、A’君がどんなに早く歩こうが絶対に出会う場面が存在しません。 一方、A君の到着時刻がA’君の出発時刻より遅い場合。このケースでその行程の途中を考えたりすると混乱してしまいがちですが、A君が全行程を終えてしまった観点に立って考えれば、答はすっきりとして明らかです。 このように互いの時間帯がオーバーラップしているケースでも、「同じ時刻」に通る場所がある確率は100%になります。 それには2つの回答が考えられます。 たしかに行きと帰りの出発時刻や到着時刻をオーバーラップする形での出題ならば、きっちりと同じにする場合よりも、その分少しは回答応募者の思考を混乱させることになるかもしれませんが、いずれにしてもこの出題の背景は、合理的で素早い論理思考ができるかどうかを見ようとするものです。 それでは解答です。 |
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それでは次の設問にチャレンジしてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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