その69 |
直感はおうおうにして間違うことが多い論理問題 |
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前号の同一時刻同一地点の設問では直感として、歩く速度も一定していない20キロメートルもの長い距離の中で、別々の日にたった1点を同時に通過する可能性などあり得ない、と思われた方も多かったかもしれません。 さて今号の設問はいかがでしょうか。それでは解説に入ります。
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Webでの当設問シリーズをたくさんこなしてきている方たちにとっては、この設問のような問題への対処法がすでに出来上がっているものと思いますが、それでも最後までやってみないと、完全さという点からするとはたしてどうかわからないと思われます。 この設問は、自動車耐久走行テストの問題で見た設問64に少し似ているところがあります。つまりその中身がそれぞれ相殺されるように思える設定になっているからです。 もちろん日常生活では、直感が随所で重要な働きをする場面が多々あります。しかし、意図して出題される論理思考の問題では、2人の子供を持つ母親の設問46や3枚のカードの設問50、および同時同地点の前問68のように、まずは最初に出てくる直感を疑ってみる必要があります。 さて、これまで当欄のご愛読者ではなかった方、あるいはまたあまりこのようなパズルにはなじみのなかった方には、まず次のような考え方をそのとっかかりとしていただくといいかもしれません。もちろん対処法がすでに出来上がっていて、そんなことはわかっているという方たちは聞き流していただければ結構です。その考え方とは、中学受験のお子さんをお持ちの親御さん方にも、お子さんの思考の仕方としてお勧めできるかもしれません。 つまり、設問はプロ選手のスタート地点を下げた結果がどうなるかを聞いており、設問の数値を変えても問題の本質は変わらないような場合には、まず設問の数値を計算のし易い、きりのいい小さな数値に置き換えてみるという方法・考え方です。 そこで100、90、10という数値で考えてみますと、このことはプロ選手が100メートル進めば素人は90メートル進み、またプロが10メートル進めば素人は9メートル進むということです。 この方法で考えますと、まずはプロの選手のスタート地点を素人との間に生じた当初の差だけ後ろに下げたとしても、同時にゴールすることはないということが、より素早くわかります。またさらに、プロの選手のほうが早くゴールすることも容易にわかります。 さて、先に「最後までやってみないと、完全さという点からするとはたしてどうかわからないと思われます」と前置きしましたが、それは洞察力を見ることに大いに関係してきます。 そこで次に洞察力に関係するところです。 そこでわかることは、当初の質問を残したまま、新たにこの質問を加えると、当初の質問が浮いてしまい、問題として成り立たなくなってしまうということです。 では、実際にどれだけプロ選手のスタート地点を下げれば、素人が同時にゴールできるのか、こう考えることによって初めて設問の数値を100%生かせることになります。 ここで、なぜ1500と1250および250という具体的な数値が使われているのか、その意味がわかると思います。つまり100と90と10という数値だと、X=111.111111・・・となって、すっきりとした整数値にならないのです。また、他の数値を使ってもなかなか整数値が得られません。 ここで洞察力の話になりますが、同時に着かないことを考えさせるために、この新たな質問が出来なかった出題者側の胸のうちを察して、同時にゴールするプロ選手のスタート地点までを回答すれば、文句なしに合格ということになるはずです。 当設問の背景は、あくまでも冷静に直感には頼らず、しかもスピード解答ができるかどうか、を見ようというもので、さらに具体的数値が出されていることから、質問には盛り込めなかった「両者同時ゴールのためのプロ選手スタート地点」も、できれば答えて欲しいという出題者側の期待も込められているものと思われます。 それでは解答です。 |
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それでは次の設問にチャレンジしてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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