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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その77

自分もその場の当事者になったとして、論理を展開してみる

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 面接試験に出題される問題の中で、代数を使えば簡単に解けるような問題でも、基本的な考え方さえできていれば、どんな問題でも代数の力を借りることなく解けることから、そのような基本的な考え方ができているかどうか、その辺の地頭力も見ようとしていたのが前問でした。
 パズルにもいろんなジャンルのものがありますが、常日頃から基本的な考え方をする訓練をしておくことが大切だということです。

 では、今号の問題はどうでしょうか。

問題 設問77  ある国の独裁者が多くの反乱者をとらえました。反乱者は全員、その額に赤か青かの刺青いれずみの印をされますが、どちらの色かは反乱者自身わかりません。また反乱者どうしが話し合うことも禁じられています。独裁者は脱走した者がいないことを確かめるため、毎日、反乱者を整列させて、色の数を数えます。ある日独裁者は、もしも反乱者全員が自分の刺青の色を推測できたら自由にしてやろうと告げます。そしてヒントとして反乱者の中に、赤、青ともに少なくとも一人はいることを教えます。全員の自由を勝ち取るためには、反乱者は毎日の整列のときに、無言で独裁者に合図をしなければなりません。その方法とは、赤い刺青をつけた反乱者全員が一歩前に出ることです。それが正しければ、全員自由です。全員動かなければ、その日は何も起こりませんが、もし一人でも違ったら、全員殺されます。反乱者たちは自分たちの刺青の色をはっきりさせるために、いくら時間をかけてもかまいません。反乱者たちはみな論理的で、全員が自由になりたくてたまりません。反乱者はどうすればいいでしょうか。

独裁者が多くの反乱者をとらえました

 当連載シリーズの過去の問題にチャレンジされてきている皆さんの中には、この設問を見た途端、反乱者が何人いるかもわからないのに、どうして解答できるのか?との疑問を持たれた方たちも、かなりおられたのではないかと思います。
 ましてや、当連載の過去の設問などを知らない方たちであれば、この点で最初からお手上げの場合もあるかもしれません。
 しかし、その人数が確定していない空をつかむような問題でも、やはり綿密に紐解いていけば、やがて解答へと辿りつけることを、以下、見ていきます。

 この設問は、どうやら自分以外に登場する他の人間の行動や発言などをベースに、彼らの思考判断を参考にして解いていかなければならない論理思考の問題のようです。
 この観点から、過去に解いてきた設問の中から似ているものがないか探していくと、設問49の不貞村の問題や設問51の海賊の問題、そして設問59のリュックの問題などに思い至ります。
 他の人間の行動や発言を参考に論理思考で解いていく問題としては、この3題は非常によく似ています。設問59のリュックの問題などは、リュックが当設問の刺青に置き換わっているだけ、と思われる皆さんもおられるかもしれません。

 ところが、設問49の不貞村の問題では50組の夫婦、設問51の問題では5人の海賊、設問59では3人の生徒というように、すべてあらかじめ登場人数がわかっている中での出題です。しかし当設問77ではその登場人数がまったく出てきません。
 しかし、ここが重要なポイントなのです。このことはのちほど解説いたしますが、つまりそんな中で解答を求めるということは、人数が何人いてもいいという、いわば数量がどんなに多くてもかまわないということを、暗に示しているわけです。


 そこで設問73で詳しくリストアップした解答への手がかりや糸口、突破口になるものを振り返ってみますと、当設問77は「複雑に見える問題、数量が多い問題、読んだだけで気後れしてしまう問題、思考が発散してしまいそうな問題、長々とした文章の問題」の問題に該当しそうで、またいくつかあるその対処法の中では、まず最初に「小さな数字や量で単純化、シンプル化してやってみる」が相当しそうです。

 そこで少ない人数として、まず試しに反乱者がそれぞれ2人〜3人の場合を考えてみます。またこの設問では、赤の刺青反乱者が一歩前に出るとありますので、行動を起こすこの赤刺青の反乱者を基準にして考えてみます。
 以降便宜上、赤刺青の反乱者を赤者、青刺青の反乱者を青者と表現して説明してまいります。

 まず2人の場合。これは簡単です。
反乱者には少なくとも赤者と青者がそれぞれ1人はいることが伝えられていますから、この場合、赤者は相手の青者を見て自分は赤者であることが簡単にわかります。したがってその彼が一歩列の前に出れば2人とも開放されます。

 では3人の場合。この場合は赤者1人と青者2人の組合せのケースAか、赤者2人と青者1人の組合せのケースB(図1)か、どちらか2通りしかありません。
 ケースAでは、青者2人を見る残りの1人が、自分は赤者であるとすぐわかりますので、この赤者とわかった1人が列の前に出れば済みます(図2)。
 しかしBのケースでは、赤者2人のそれぞれが目の前にいる自分以外の2人は、赤者と青者であるとわかっても、これだけでは自分自身がどちらであるのかわかりません。したがってこの段階、つまり初日にはこの赤者2人は何の行動も取れなく、列の前にでることはできません。

図1 図2

 ところがこの列の前に出ないという事実があった後なら、この赤者2人が自分は赤者だとわかるということです。なぜならこの2人のうちのどちらかが青者であれば、その残りの1人が自分は赤者だとわかるからです。
 最近は大学生や社会人だけでなく、高校あるいは中学生の皆さんまでも、当欄を愛読されている方がおられるようなので、少々詳しすぎるかもしれませんが、ここでは敢えて彼らのために、もう少し丁寧でわかりやすい解説を試みますと、次のとおりです。

 このケースで、この赤者2人を赤者(1)及び赤者(2)とし、この列の前に出ないという事実があったあと、2人の考える思考をみてみますと、
 赤者(1)は、「もし自分が青者なら、赤者(2)は1日目に列の前に出たはずだ。というのも、この赤者(2)は残っている3人目のもう一人が青者であるのを見ているのだから。ということは、自分は赤者だ」と悟ります。
 赤者(2)も同様のことを悟ります。
 したがって2日目には、赤者(1)と赤者(2)の2人が列の前に出て、列の前に出なかった青者とともに3人とも解放されるということです(図3)。

図3

 さて、この段階で解答へのキーとなる2つのことがわかり、もうこの設問は解けたも同然なのですが、その2つこととは何かわかりますか。
 1つは前述した重要なポイントのこと。もう1つは設問の普遍性です。地頭力の持ち主であれば、おそらくこのことを素早く理解されると思います。

 重要なポイントとは、青者が何人いてもこの論理は変わらなく、この赤者2人のときの説明文で「3人目の」部分を「その他すべての」にするだけで、そっくりそのまま使えるということです(図4)。つまり、
 赤者(1)は、「もし自分が青者なら、赤者(2)は1日目に列の前に出たはずだ。赤者(2)はその他すべての青者である反乱者を見ているのだから。ということは、自分は赤者だ」と悟ります。赤者(2)も同様のことを悟ります。したがって2日目には、赤者(1)と赤者(2)の2人が列の前に出て、列の前に出なかったその他すべての青者とともに解放されるということです。
 と、そのまま使えるのです。

図4

 もう1つの普遍性とは、この重要なポイントをもとにして、赤者が増えていくにしたがって、赤者たちが前に出るべき日にちが増えていくだけだという普遍性がわかるということです。
 たとえば赤者が1人増えて、赤者(1)赤者(2)赤者(3)と3人いる場合(図5)、
 赤者(1)は「自分に見える赤者は2人だけだが、もしもその赤者が2人だけだったら、ケースBと同じで、2日目でこの2人が列の前に出ているはずだ。この決着が着いていないということは、自分が赤者だからだ」と、2日目が終わったところで悟ることになり、赤者(2)も赤者(3)も同様のことを悟って、3日目にこの3人が列の前に出ることにより全員解放を勝ち取れることになります。

図5

 以下同様に赤者4人の場合も、自分に見える赤者が3人だけだったら、3日目に動きがあるはずなのに、その動きがないということは自分が4人目の赤者だと3日が終わったところでわかり、反乱者はみな論理的だと設問にもあるように、赤者4人ともこの中身を理解し、4日目に列の前に出る行動を起こすということです。この過程は人数が増えても普遍的に変わらないわけです。
 以上のことから、反乱者全員解放されるのは、初日から数えて、赤者の数だけの日数が経った日であることがわかるということです。

 数量が多いと思われる設問は、まず少ない数量でやってみることが大前提ですが、当設問のような場合には、自分も赤者(1)になったようにその参加者になったつもりで、もしもその当事者ならどう考えるかを論理展開してみると、スムーズに解答へと辿り着けることになるということです。

 さて、この設問をもう少し複雑な内容にすることもできます。それは赤者、青者のどちらでもいいから列の前に出て、正しく揃えば開放されるとするものです。もちろんここまでの解説を見てこられた皆さんはわかると思いますが、自分から見ていずれか数の少ない色者の人数が基準となって開放日が決まるということです。

 この設問の背景は、解説したような論理思考ができるかどうかを見ようとするのが主ですが、同時に重要なポイントとして、青者が何人いてもこの論理は変わらないということや、またそこに潜む普遍性に、いかに早く気付くかどうかなども見ようとしていると考えられます。

 それでは解答です。


正解 正解77  反乱者の各人は、まず自分から見た赤者が何人いるか数える。1日目から数えてその人数の日数になっても動きがなければ、次の日に自分は列の前に出る。

 では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。


問題 設問78  1万円札、5千円札、2千円札、千円札が、外からは見えないケースの中に各10枚以上入っていて、それらはよくかき混ぜてあります。あなたがその中に手を入れて、無作為に1枚づつ取り出すものとします。そして同じ種類の紙幣を10枚取り出した時点で終了します。では、この終了するまでに取り出した額はいくらが最高でしょうか。


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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

執筆者紹介


執筆者 梶谷通稔
(かじたに みちとし)

テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)

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