その9:ものごとの善し悪し |
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当欄を愛読されて皆さんの中には、お気付きの方もいるかもしれませんが、設問の解説には可能な限り図を使っております。前回の設問8において図があるのとないのとでは、理解しやすさという観点からまったく違うことを実感していただけると思います。幾何学の問題では補助線というものを引くと、まことに簡単明瞭、わかりやすく解答へと辿り着くことができますが、ここでの図示はしばしばこの補助線の役割をしてくれるものです。 しかしこのビル・ゲイツの試験問題は、あくまでも面接時に出されるもので、筆記試験時のものではないため、実際、その場で図を書くわけにはいきません。そのため、本欄の設問に挑む模擬応募者の皆さんは、その設問が図形を描いて解けそうな性格のものであれば、あくまでも頭の中で、できるかぎり図形を描きながら解いていく習慣を身に着けられることをお薦めします。 さて、設問9についてはどうでしょうか。これは残念ながら図形に頼れそうな内容ではありませんが、それでも自分のどちらの手を使って、どのような形でドアの鍵を回すのか、その状況を想像しながら回答を考えてみてください。 |
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最近はリモコンでドアキーの開閉操作ができるだけでなく、さらに3km以内であればエンジンまでかけられるようになっていて、離れた駐車場に止めてあるエンジンを事前に暖めておけることから、寒冷地の朝の出勤者には大変重宝がられています。 そんなわけで、従来型のマニュアル式でドアを開閉するドライバーは次第に少なくなってきているようですが、外人も含めて、現在および最近までマニュアル式だった友人・知人30人を対象に、上と同じ質問をしてみました。 結果、改めて聞かれると即答できない人ばかりで、しばらく考えたあとの回答でも、しっかりと運転席と助手席とを分け、そのキーによる開閉方向を正確に言い当てた人はゼロでした。ここで「言い当てた」という表現を使ったのは、全員確信を持って答えられず、そのあとでの検証が必要だったからです。
では実際どうなっているか、日本における日本車や外車及び、海外での現地車や日本車について、国内外の友人・知人の情報をもとに調べた結果、メーカーでは統一されているようではあるものの、各国において、国産車と輸入車、さらに右ハンドルと左ハンドルとで入り乱れ、バラバラであるということがわかりました。しかしいずれの場合も運転席側と助手席側のドアでは、キーの回転方向は逆になっているところは一緒でした。 車以外の場合を考えれば、たしかにホテルの部屋にしろロッカーの扉にしろ、その鍵の開閉方向は千差万別です。そもそも鍵というのは防犯予防のためにあるもので、それに統一規格などあるわけがないということなのかもしれません。 調べた内容の一部をご紹介しますと、 さて、鍵の開閉には「利き手」が重要な役割をはたします。右利きと左利きの割合は、実際どれくらいなのかを調べてみますと、昨年2005年の夏、甲子園出場49校の登録選手882名のうち772人(87%)が右投げの右利きでした。また、パソコン利用者の88%は、マウスを右手で操作するという調査報告なども加味しますと、世の中の80〜90%は右利きとして考えてもよいようです。 そこで、これらを前提に本題に入ります。この設問は非常に漠然とした聞き方で、当初、出題者側の主旨あるいは意図がどこにあるのか皆目検討がつきません。たとえば、生産性や簡便性を考えても、実際、ドアのロックも、開けるのも同じ回数だけあって、一方の操作が易しくなっても、反対側の動作は「やりにくい」ことになり、どちらがいいか答が出ないのです。外にいくら考えても、有無を言わせず一方のほうがいいという理由が見当たりません。 では、開けるのにいい理由付けです。まず右利きの人をベースにすると、手と手首、そして腕の造りから、時計まわりに鍵を回すほうが易しいのです。それは机の上に手を乗せた場合を考えていただければわかりますが、自然と右手は、手の平を伏せたあるいは斜めに伏せた状態になります。意図しない限り、手の平が表向きにはなりません。 |
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では次の設問を、出題背景も考えながら解いてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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