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あなたはビルゲイツの試験に受かるか?
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その80

道具がないときは、そこにあるものがヒントに

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 いずれの設問においても、その手がかり、糸口、突破口をどのようにして見つけ出すかがキーポイントになりますが、その解き方をまとめて解説してある当連載の「その73」を見ても、前問の場合はそれが参考にならず、改めて地頭力を発揮しなければならない新しいタイプの設問でした。
 そんな前問を前にしても、すんなりと解いた方もおられたかもしれません、がしかし、たとえその方たちといえども、1つの解答で満足し、それ以上の解答をしっかりと出された方は、ごくまれだったのではないでしょうか。

 設問19のケーキの問題もそうでしたが、論理的な思考をベースにした解答はもちろん有効で大切です。しかしその他に誰でも納得できるような易しい解き方があるようであれば、もちろんそちらの解答のほうが、一般に歓迎されます。なぜならば、大勢の人々により早く理解されることのほうが、実際の日常生活では役に立つからです。
 ステップを踏んで問題が解けたといっても、このように解答が1つには限らないような落とし穴のある設問も多々ありますので、面接用の設問には常に充分心して取りかかることをお勧めします。

 では、今号の問題はどうでしょうか。

問題 設問80  あなたの叔父さんは薬の溶液の量をきっちりと決めて、毎夕、飲んでいます。叔父さんは透明で完全な円柱形をした固有のグラスを使い、溶液の大瓶からそのグラスに移して、グラスのちょうど半分のところに付いている印のところまでの量を飲んでいます。あなたがある夕方叔父さんを訪ねると、とほうにくれていました。その印が消えてしまっていたのです。溶液はグラスに半分ほど入っているように見えますが、どうやったら正確に確認することができるのか、叔父さんはその量が「半分」「半分より少ない」「半分より多い」を正確に知りたいといっています。その固有のグラスは1個しかありません。道具は一切使えないとしたら、あなたはどうしますか。

錠剤A、錠剤B

 さて、道具は一切使えないとあります。したがって使えるのは、目の前にある薬の溶液の入った大瓶か、常用している固有のグラスしかありません。
 しかしよ〜く考える方たちの中には、これら以外のもので必ずしも道具とは呼べないものがある、と思いついた人もいるかもしれません。それは自分の体です。この場合は、体というよりも手です。では、手を使ってどうするのか。

 まず右左どちらの手でもいいですが、その手の指を使ってグラスに入っている溶液の高さを測定する方法です。
 つまりその高さの分だけ親指と人差し指を開き、そのまま2つの指の間隔を固定するのです。中には、溶液の高さがその間隔以上あったらどうするのかと心配する人がいるかもしれませんが、溶液は薬そのものですから、そんなに大量ということはないでしょう。

 次に使っていない反対側の手の平でもってフタをするように、グラスの開口をしっかりとふさぎ、そのままひっくり返すわけです。この場合、溶液が少しでもこぼれないように注意しなければなりません。
 そこで今度はそのひっくり返した状態における溶液の高さと、先ほど固定しておいた2つの指の間隔とを比べ、その長さを比較するのです(図1)。

最後の1枚を取り出す前の最高枚数

 もしもその長さ、つまり高さがこの固定した2つの指の間隔と同じなら、グラスの溶液は半分であり、その間隔より多くあるようであれば溶液は半分以上、少ないようであれば溶液は半分以下であるということが言えるわけです。
 しかし、設問を注意深く読めば、この方法ではダメなことがわかります。半分か、半分より多いか少ないかを、どうすれば正確に確認することができるのかと、その正確さが要求されているからです。

 指を使う場合はどうしても不正確になってしまいます。というのも、手の平は完全に平らではないので、フタをしたといってもきっちりとした平面でふさいでいるわけではありません。そこに凹凸による誤差が生じます。
 だいたいこの場合、少しも水をこぼさないようにグラスをひっくり返すことすら困難です。2本の指の間隔を固定して、なおかつグラスをひっくり返すのを、この右手が手助けしなければならないからです。

 さらにまた、2つの指の間隔は道具となるような添え木などで固定しているわけではないので、どんなに固定したといっても、必ずブレが生じます。さらに溶液が半分よりも指の幅以上に多かったり、少なかったりした場合はそれでもなんとか解答できるかもしれませんが、その量がほとんど半分であった場合には、幅のある指の大きさがネックとなって正確には測定できないからです。

アルキメデス

 したがってこの方法ではダメなのです。では手以外にどんな道具があるのか。やはり、目の前にある薬の溶液の入った大瓶か、常用している固有のグラスしかないようです。
 地頭力のある方なら、設問の説明文を注意深く読んで、このグラスは普通のグラスの形状とは違うことに気づかれているはずです。
 一般に我々がグラスというと、底から上に向かって広がっているコップの形を想像しますが、ここでのグラスは完全な円柱形であると言っています。

 前述のグラスをひっくり返す発想をされ方は、この点には気づかれていたわけですが、正確さというところが難点になりました。
 しかしもう一度、完全な円柱形という点に注目すれば、その形状は上下左右、完全に対称形であるがゆえに、半分という世界を考えるには非常に好都合な形であることがわかります。

 そのことは図にすれば、一目瞭然で。たとえば円柱形を平面図にすれば長方形になり、図2のようにそこに対角線を引けば、面積を半分にすることができます。ここまでくれば、もう正解に近いところまできたことがおわかりでしょう。
最後の1枚を取り出す前の最高枚数

 そうです。円柱でも同様で、それをこの長方形に見立ててその対角線に面を考えれば、体積が半分になることがわかりますから、円柱を傾けた場合の溶液が図3の状態になっているとき、ちょうど円柱の半分の体積を占めることになります。

最後の1枚を取り出す前の最高枚数

 したがって、溶液がこぼれる寸前までグラスを傾けていったとき、溶液の水面の一端がきっちりとグラスの底の上端にきていれば、溶液はきっかりグラスの半分あることになります。
 そして上端にくる前にこぼれてしまうようであれば半分以上、上端にきてもまだこぼれないならば半分以下ということです。この方法であれば、設問で問われている正確な測定ができるわけです。

 正確な測定を可能にする定規や秤などの道具が一切ないのに、正確に測定せよ、という命題が与えられている当設問は、逆に考えると、そこにあるもので可能ですと、まさにそのヒントを与えられていることになるわけです。
 したがってこの設問の背景は、いかに早くそのヒントに気づき、グラスの持つ形状に注目して、その形状が持つ特性を利用できるかどうかを見ようとするものです。

 それでは設問80の解答です。


正解 正解80  溶液がこぼれる寸前までグラスを傾けていったとき、溶液の水面の一端がきっちりとグラスの底の上端にきていれば、溶液はきっかりグラスの半分。上端にくる前にこぼれてしまうようであれば半分以上、上端にきてもまだこぼれないならば半分以下。

 さて、今度の設問81は少々骨のある問題です。夏休みを利用し、充分時間を取って論理思考の世界を堪能してください。


問題 設問81  ここに硬い新素材で新たに開発したボール状の製品が2個あり、その耐久性をテストすることになりました。製品は見た目だけでなく、すべての面で精巧厳密に作られているため、その耐久性もまったく同じです。100階建てのビルの何階以上から落としたら製品が壊れるか、あなたはそのテストを依頼されました。製品が100階から落としても壊れないほど堅固なものに仕上がっているか、1階から落としてもすぐに壊れてしまうほどもろいものなのか、製品の耐久性については一切わかっていません。このテストで落としたら確実に製品が壊れる階を特定するためには、最低何回落とさないといけないか、あなたはどう算定しますか。正確な階が特定できるのであれば、製品は2個とも壊れてもかまいません。


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 ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。
 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

執筆者紹介


執筆者 梶谷通稔
(かじたに みちとし)

テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)

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