その83 |
解けたからといっても、安心しない |
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日常見慣れている時計を連想しながら前問に挑まれた方たちの中には、直感的な見方が先行して、つい間違ってしまったという解答もあったものと思います。特にストップォッチを片手にした面接官の前で答えるような設定の場合ならば、なおさら間違え易い問題です。 それでは、今号の設問はいかがでしょうか。
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この問題を難しくしているのは、全員の正確な給料がわからなければ、その平均値などを求めることはできないのに、そんな中でお互いの給料すらも知ることができない、という点にあります。こんな状況の中で、はたして平均値などを出すことができるのか。 そこでまずはこの連載を通し、これまで見てきた82個の設問のうち、似たような問題がなかったかどうかを振り返って見てみることにすると、かろうじて1問だけありました。 形も色も大きさも重さもすべて同じで、外見上まったく区別ができないAとBの2種類の錠剤が混ざってしまった中で、両方とも同じ量だけを取り出すにはどうするか、という問題でした。どこが似ているかと申しますと、個々に混ざった状態では不明ながら、全体としての平均を求めるようにすれば解決するという問題だったからです。 しかし、このような解決策をこの設問83に応用することを考えた場合、新たに人を加えて全体の合計給料を平均化するなどということはできません。ところが以外にも、その解答のやり方がヒントを与えてくれるのです。 では当設問に当てはまりそうな対処法とはどんなものかと考えてみますと、極端なケースを考えてみる、になるでしょう。そこで当設問の極端なケースとして考えられる対象となると、それは人数です。では、人数を最少の2人にした場合を考えてみます。 ところが、実は思いもよらないこの第三者案が、またまた大きなヒントを与えてくれることになるのです。普通、第三者という意味はメンバー外ということですが、3人目のメンバーとして、設問の設定を3人で考えてみるわけです。 よ〜く考えれば、2人では不可能でも、3人となると、あることが可能になってくるということなのです。ここで発想の転換です。3人の場合、各自、本当の給料を出さなくても合計額が真の給料になる方法があるということです。 そんなバカな方法があるものかと、またまたお叱りの声が聞こえてきそうですが、そのヒントをくれるのが、先ほどの錠剤の話です。そこで見た2つの解答のうちの1つに、錠剤を半分に切ってその片方ずつを互いに集めれば、A、Bともに半分ずつ均等に分けられるという解答例がありました。 つまり、メンバーがA、B、Cの3人とした場合、各自、自分の給料を適当に2つに分け、その2つの金額を他の2人に耳打ちするわけです。すなわち、Aが2つに分けたうちの1つをBに、もう1つをCに耳打ちするわけです。 BもCも同様に自分の給料を適当に2つに分けて両隣の人に耳打ちします。そして最終的に3人が聞いた金額を合計すれば、結果、それが3人の給料の真の合計金額になっていることがわかると思います。こうしてその結果を人数の3で割れば、その平均値が簡単に出せるということです。 さて、この時点でハッピー、ハッピーで終わろうとすると、思わぬ落とし穴が待っています。ここで安心して手を休めてはダメなのです。さらにもう一歩踏み込み、ビル・ゲイツが強調している「よ〜く考えよ」を実践することにより、他にも方法があることがわかってくるのです。それを見落としてはならないということです。 このように、でたらめな金額を有効に使えるということがわかったことから、各人の伝え方を変えれば、もう1つの方法があることがわかってくると思います。 つまり、最初にAがでたらめの金額をBに伝え、Bはその金額にB自身の給料を加えてCに伝える。次にCはBから聞いたその金額にC自身の給料を加えてAに戻す。そこでAはCから聞いた金額に自分の給料を加え、そこから最初にBへ伝えたでたらめな金額を引けば、結果、その金額は3人の給料の合計金額になっていることがわかると思います。それを3で割れば平均値です。 さて、皆さんの中には並列方式ではなく、逆にこの直列方式での解答された方もおられたかもしれませんが、同時に両方の解答をされた方はおそらく少なかったのではないでしょうか。 この設問の背景は、相手に伝える金額の中身が本当の給料の額ではなくても、全体を通して見れば、合計金額になるという方法があることに、いかに早く気付くか、そしてたとえ1つ方法がわかっても、それで安心しないでもっと注意深く掘り下げる資質の持ち主であるかどうかを見ようとするものです。 それでは設問83の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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