その85 |
ルール次第で、思わぬ結果が出てくる |
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前問の帽子をかぶった生徒の問題は、論理的に導ける解答とアナログ的思考による解答の2つがありました。いずれの解答も残念ながらという方もおられたかと思いますが、論理的な思考での解答は、不可能と感じたとき「それができなければ解けない」と考えることが突破口になりました。 その問題では、2つの言葉だけで4つを判別せよということは不可能だが、何とかその4つを、2つの場合に凝縮した伝え方ができれば解けると考えたときに、初めて偶数と奇数の2つの場合という突破口のアイデアが見つかりました。 もう1つのアナログ的思考は、論理思考人間がおうおうにして陥り易い点で、設問19のケーキを二分する問題や設問28の列車と鳥の問題と同様に、むしろ論理思考には汚されていない無垢の頭のほうが思いつく解答ということです。 それでは、今号の設問はいかがでしょうか。
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まず設問の理解です。3枚の 「そんなことができるのか」というのが、最初に思う率直な感想ではないでしょうか。というのも、あなたはそれら3つの数字がどんな数なのか具体的に知らないという、つまり一番大きな数字自身すらわからない状態でそれを当てよ、というわけです。 しかしこの設問では、伏せてある札3つのうちの1つを、ただやみくもに選ぶということではなく、選択肢としては最大2つまではその数字を見ることができるルールになっています。 したがってこの設問の設定によれば、とにかく全部の札を見ることはできない以上、100%確実にそれを当てることなどはできない、ということになります。 とすると、この設問は100%勝つための方法ではなく、勝率を求める確率の問題なのではないか、ということになります。 ここまでくると、ずっと以前からこの連載を愛読されている皆さんの中で、モンティ・ホールという名でよく知られている問題を思い出された方もおられたのではないかと思います。つまりそのやり方、あるいはルール次第では、普通に考えられる確率とは違った確率が出てくる、という問題です。 当連載では設問53がそれに該当します。そこでは、普通に考えるとどうしても確率は1/3になるのですが、連載その54で詳しく補足解説しているように、はずれがわかっている箱を意図して落とすということを知っているか知らないかによって、確率の分母となる起こりうる全体の事象数が変わってくるため、確率も違ったものになる、というものでした。 これまで設問の中で設定されている人数や対象物の数が多い場合には、その対処法として人数などの数を減らしたり、極端なケースでまずやってみるというのが定番でしたが、幸いこの設問では対象となっている札の枚数がすでに少ない状態になっていますから、すぐにやれそうです。 そこで、とにかく無条件に最初の1番目の札をとっておいた場合には、この6通りの中で、組合せの5と6の2つで勝つことができます。つまり勝率は2/6=1/3です。(図1) そこで気づかれると思いますが、この時点での選択方法は2つしかないということです。つまり最初と2番目、この2つの札の数字と比べて、もしも2番目の数字が大きい場合には、その2番目の札をとっておくというケースAか、その逆に小さい場合にそれをとっておくケースBか、この2つの選択肢だけです。 では、このケースAを6通りの組合せに当てはめた場合の勝ち負けを見てみます。すると図2のようになり、結果、その勝率は3/6=1/2となって、普通に考えた場合の1/3とは違った結果をもたらすことになることがわかります。 ですから、普通に考えれば1/3の勝率になるように思えるこの設問も、2番目の札を見たときに、それが最初の札の数字よりも大きい場合にとっておくとすれば、その勝率は1/2に上がる、ということです。 この設問の背景は、3つの札の数字全部を比較できる状態になければ、その中で一番大きな数字の書かれている当該の札を100%当てることは不可能である、と早くから判断し、これまでの連載で見てきたように直感的で普通に考えられるよな確率はおうおうにして間違いだということをしっかりと認識した上で、一層深く掘り下げた考え方ができるような資質の持ち主かどうかを見ようとしているものです。 それでは設問85の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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