その91 |
先入観にとらわれず視点を変えてみる。 |
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与えられた事態の中で、設問の中の登場者たちが互いに相手がどう考えるのか、その相手の思惑を論理的に分析することにより解答を出すという問題は論理パズルの代表的なものの一つで、形を変え姿を変えてしばしば試験問題に取り上げられますが、前問の善人と鬼の問題もそうでした。 さて、今号の設問はどうでしょうか。
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重力、これは物理の問題か、それとも・・・。 しかし、普通に解けるような問題は試験問題には出ません。何かあるのです。でもこの設問は、これまで見てきた論理思考で解く問題とはちょっと違うようです。としたら、何かトリックがあって一休さんのトンチの世界で解くような問題なのか。 では、現実に設問に適うようなものが、ほんとうにあるのか。設問で問われているのは「重くなるもの」として、あくまでも「もの」としての物体のようですが、引力は物体同士がお互いに引き合う力ですから、同じ物質を地球と月の世界で比べた場合、引力の強い地球でのほうが必ず重くなるはずです。 さて、この行き詰ったところで再度メッセージです。そもそもパズル形式の面接試験が、最初にアメリカのIT業界で始まり、今や広くコンサルタント会社や調査会社、マスコミ、銀行、保険会社や航空会社、さらには軍にまで広がってきているのは、日々めまぐるしく世の中は変わっており、その変わる内容や頻度が以前とは比べものにならないくらい今日は激増してきているためです。 つまり、実際のビジネスの現場ではすぐに解答がでないような場面、何が飛び出すか、何が起こるかわからないといった、学校では教わらなかった場面に遭遇することが日常茶飯事になってきており、未知の世界での問題解決力がどうしても不可欠となってきているという今日の背景があるからです。 だからパズルを解いていく過程がまさにビジネス界におけるミニプロジェクトそのものであるという認識の上に立ち、したがってそこでの出題意図は、ミクロ思考かマクロ思考か、常日頃から注意深く物事を見ているかどうか、先入観にとらわれず視点や着眼点などを変えてあらゆる可能性を追求しようとする人間か、よく考え、また想定外のことにも細心の注意を払う注意力の持ち主か、どのような創造的発想をするか、また正解はなくともそれ相応の説得力がある回答が出来るか、解くスピードや直感を見るものから、どのように問題を解いていくかの論理的な思考過程を見ようというものまで、その項目は多岐にわたっていて、その上ねばり強い思考探求力や実行力、行動力までも見ようとしているということです。 一方、パズルの解答で世の中に多く見られる単に「正解はこうです」といった、いきなり正解に飛ぶ解答形式では、正解に至るまでの考えを巡らして行く道筋がすっぽりと脱落してしまうことから、どうしても思考力を培うことができません。 この機会にもう1つ。このような意図から、たとえビル・ゲイツが直接出した問題でなくとも、皆さんの思考力の増強育成に役立つと思われるパズル問題ならば、できるかぎりこの連載に取り上げて見ていただいております。 さて、前置きが少々長くなりましたが、なぜこの行き詰ったところで、敢えてこのようなメッセージをお伝えしたかと申しますと、出題者側が設問で回答者の何を見ようとしているのか、その項目を考えてみると、往々にしてその中にもヒントがあることがあるからです。 では、この問題の場合はどうか。設問では「重くなるもの」が存在するとして、断定的な表現を使っています。しかし、通常の世界での物理現象ではもはや解けないようですから、したがってこの試みをしてみたらどうかということです。 先入観にとらわれず視点を変える・・・。ではどんな視点か。そこで、もしもそんな物体があるとしたら、地球と月という固体自身の違いから導き出される特別な現象として、月では特異な反応を示すようなものという視点はどうか、という考え方です。 地球と月で大きく違うものとしては、まずは海、大気、生命・・・などの有無が挙げられますが、ここで同じ秤を地球と月の地上表面に置き重さを量るということだけを念頭にして考えますと、はたと気付くことが出てくるのではないでしょうか。 ここまできますと、もはやおおよその見当がつくのではないでしょうか。たとえば大気の中でどんどん空に舞い上がっていく風船を考えてみてください。それはヘリウムなどの大気よりも軽い気体が中に入っているからで、風船にかかる浮力のほうが、風船にかかる重力よりも大きく働くので、重さが記録できないわけです。 一方、月面上では大気がないので重力だけが働きます。実際、月の重力は地球の1/6ですが、ヘリウムにしろ水素にしろ、たとえ1/6になるといえどもいくらかの重さが記録されることになります。 地球の大気はおおよそ窒素が78%、酸素が21%で、これだけで99%ですから、この2つのガスの混合体と物質の重さとを比較すればわかります。重さの元となるのは各物質の質量の大きさになりますが、ここでは難しい説明は止めにして、それらを比較できる簡単な方法はといえば、重さの目安となる原子量が順番に列記してある元素の周期表をみればいいというわけです。すると水素が一番軽く、次にヘリウム・・・などがあることがわかります。もちろん地球圏内の大気圏外で測定するならば、すべての物質は地球でのほうが重くなるわけですが、必要なら試験官にこの測定のことを付け加えればいいでしょう。 ところで重力についてですが、ニュートンは万有引力という表現で、またアインシュタインは、当連載の設問71でも解説しましたように空間のゆがみで説明しました。 本設問の出題背景は前述のように、先入観にとらわれず視点や着眼点などを変えてあらゆる可能性を追求する姿勢の持ち主かどうか、を見ようとしているものです。 それでは設問91の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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