その93 |
裏返しの発想だけで、満足しない。 |
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本稿では、ビル・ゲイツやマイクロソフト社が出題した入社試験問題を主として見てきていますが、そのビル・ゲイツ本人あるいはマイクロソフト社が直接出した問題でなくとも、皆さんの「地頭力」や「論理思考力」、「考える力」や「創造力」、ひいては「問題解決力」の増強に役立つと思われるような問題ならば、グーグルやヒューレット・パッカード、アクセンチュアやボストンコンサルティング、インテルやブーズアレンハミルトンその他の会社で出した問題でも、できるかぎりこの連載に取り上げて見ていただいております。 そのビル・ゲイツといえば、多くの皆さんがご存知と思いますが、パソコンの基本ソフトを開発したことにより、1994年、39歳にして世界一の億万長者になった人です。 「金持ちのままで死ぬのは不名誉な死である」は、アメリカの鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの言葉ですが、西洋には「ビジネスの成功は、そのゴールである“社会還元”の仕方で決まる」という思想があります。 さらに彼の盟友・ウォーレン・バフェット氏もこの財団の主旨に賛同して寄付を発表しています。このバフェット氏も億万長者で、2012年、世界第4位です。 そのビル・ゲイツが軽井沢に別荘を建設するとの噂が出始めたのは昨年2012年の初めです。敷地面積は約22000m²(=約6,600坪)、総工費約80億円、地上1階・地下3階、回廊式和風建築のようで、来年の2014年7月の竣工に向けて大成建設が着々と工事を進めており、雑誌社の撮った空からの写真を見ますと、かなり出来上がってきています。 はたしてそれがビル・ゲイツの別荘かどうか、関係者には緘口令がしかれているようで、まだその真偽は定かではありませんが、ただ写真で見るかぎりは普通の個人別荘の域をはるかに超えており、会社の寮なども含めた周りの別荘群とは比べものにならないくらい大きい点や、シアトルのワシントン湖のほとりにある私邸の敷地面積は約21000m²で、
この東洋的な木造建築といえば、同じく2013年版長者番付で第5位のオラクル創始者・ラリー・エリソンも、当連載その25でも紹介しましたように、東洋風のそれもずばり日本調に凝っている一人で、わざわざ日本から大工や庭師まで呼んで、桂離宮を模した邸宅や庭園をサンフランシスコの郊外に作っています。 しかし世界にはいくらでも素晴らしい保養地がたくさんあるのに、もしもその噂が本当だとすると、なぜ日本の軽井沢なのか。 さらに個人美術館も付いているという噂まであり、世界で唯一個人で所有しているレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿「レスター手稿」や世界初の印刷聖書であるグーテンベルク聖書などが、ある特定時期だけに展示されて見られるようになるかもしれないなどと、ロマンもかきたてられます。 さて、ビル・ゲイツの噂話で前置きが長くなりましたが、今号の設問はどうでしょうか。
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まず、簡単に考えられる方法は、手袋の洗浄や煮沸後の再使用です。しかし煮沸洗浄するといっても、万が一その再使用が原因で不慮の感染事故が起こった場合には、確実にその病院の致命傷になりますから、普通は使い捨てにしているはずです。 問題を整理すると、 そこで多くの皆さんにひらめいたことといえば、手袋の裏返しという方法ではないでしょうか。まず、2組の手袋で2人の患者の手術を行い、次に3人目の患者のときに、すでに使った手袋の1組を裏返して、それを表面が汚れたままになっている残りの手袋の上にはめて使う、という方法です。 しかし、この方法を思いついた人でも、自分の手を汚さないで、汚染された手袋をどうやって外し裏返すのか、はたと迷った方もおられたものと思います。 しかし、手術用の手袋はそれらと違って薄いゴムでできています。したがって、その取り外しは普通の手袋のように指先から引っ張って外すよりも、ゴム手袋の付け根にあたる肘のほうからめくるようにして外すほうが、すんなりと取れ、しかも裏返しになって取れるということです。 でも両手が汚れている状態で、最初にどうやって肘のほうからめくるのか、という問題に突き当たりますが、これはまず最初、何か固定された鍵爪様のものに片方のゴム手袋の付け根部分を引っ掛けて外し、次に素手になったほうの手で、もう片方のゴム手袋もめくって外す。 次に、ゴム手袋の付け根部分まで汚れてしまったらどうするか、という問題に思い当たるかもしれませんが、そういうことが起こらないように充分長く作ってあるのが手術用の手袋です。 したがってあくまでも、付け根の部分までは汚れていないとして、1人目の患者の手術が終わったら、その手袋を裏返して外し、表がきれいな手袋の状態にしておく。そして2人目の患者のときに2組目の手袋を新たに装着し、その2人目の手術が終わったときにその手袋は外さないで、先に裏返しておいた手袋をその上にはめて3人目の手術をする、というやり方です。 一応、この方法が正解ではあるのですが、しかし万点ではないのです。 それにはまず最初、2組の手袋を重ねた形で着用することです。こうすれば、最初に2組の手袋を一度に装着できることから効率もよく、またきれいな状態ままの手袋ですから、その時点での汚染のリスクはまったくないということです。 この手術用手袋の裏返しを、事件解決に使った有名なTVドラマがあります。それは刑事コロンボの第29作品「歌声の消えた海」で、拳銃を使った殺人事件が洋上の豪華客船の中で発生します。その拳銃の領収書が、手品師Aのかばんの中から見つかり、当然Aが疑われます。またその拳銃が客室から集めたシーツの洗濯物の中から見つかるものの、Aが犯人なら領収書などをとっておく必要がないはずだとの見方から、コロンボはAを犯人にしようとしているBを疑うのです。 さてこの設問の背景は、手袋の裏返しという柔軟な考え方のできる持ち主かどうか、さらに常に効率的なやり方というものを考えていて、緊急時にもそれを自然に実践できるような準備のできている人かどうかを見ようとしているものです。 それでは設問93の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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