その98 |
難しく考えなくても解ける |
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前回はSTAP細胞の発見ニュースに沸いてコメントをしてしまいましたが、それも論文の不備から急転直下、今やSTAP細胞の存在までが疑われているようです。しかしハーバード大学、ネイチャー誌、理研といった、あれだけの権威の中での発表なので、STAP細胞の捏造までは考えにくいところです。 どこかでSTAP細胞が再現されれば、それで一件落着ということになりますが、一方、そこでコメントしたもう一つのほうの話は、オバマ大統領からも祝福された15歳の少年による発明でした。 さて、毎年3月に入ると、アメリカフォーチュン誌が世界の長者番付を発表しますが、本連載シリーズの設問源流とも関係するビル・ゲイツ氏は5年ぶりに1位に返り咲きました。1995年から通算15回目のNo.1 です。 では、今号の設問の解説に移ります。
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この問題を見て、まず最初に皆さんが受けた印象はどうでしょうか。あくまでも人口比率はどうなるかという直感的な印象ですが、そこには次のような2つの、まったく正反対の受け止め方があったのではないでしょうか。 1.男の子だけを欲しがる男子奨励の国なのだから、男の子ほうが多くなる。 このような正反対の受け止め方といえば、昔、未開地のアフリカに行った2人の靴商人が、現地人のすべてが裸足で生活をしているのを見て、 と、本国に向けてまったく違った2通りの報告をしたという話を思い出しましたが、さて本問はどうでしょうか。 女の子の場合、延々と産み続けるわけだから、無限という数がチラチラしてくることや、それでも母親には出産年齢という制限があるのだから無限ということはないはずだとか、いや、そうは言っても国の人口を考える以上、やはり膨大な量を想定して取りかからねばならない・・・などなど、つかみどころのない複雑な世界に引き込まれるように感じられた方もあったかもしれません。 では、本問のような設問に対してどのように取り組めばいいのか。 そこでその解説している諸項目の中で、当設問に該当しそうなものを探してみますと、その中の これにならって、1組のカップルだけの場合を考えて、その家族構成がどんな比率になるかやってみます。 男の子が生まれるまで、進むにしたがってその確率は1/2ずつ下がっていきますから、出生順番別にケースを並べてみていきますと、
・ となっていきます。 したがってこの確率で人数という点に注目し、男の子の人数の期待値を求めるなら、その和になりますから、 ここで、なんだか難しくなってきたと思わないでください。中には高校の数学に出てくる無限級数の和というような定理が脳裏をよぎって、こんな問題が面接試験に出たら、定理をしっかり覚えている人間だけしか合格できないのではないか、と感じた方もいたかもしれません。 AとBを求めるためには図形にして、AとBの中の各数値を、図1-1と図1-2のように面積にしてみるのが1つの方法です。いずれもその最終合計は1となっていくことがわかります。 図ではなく、もう1つの方法は、引き算という簡単な算数の計算で出ます。 Bにおいても1/2を掛け、同様にして左辺同士、右辺同士を引けば、 結局、A対Bは1対1で、男の子と女の子の比率は同じということです。 しかし、そんな確率で解くのは苦手だという方には、もっと簡単に解ける別の方法があります。 天の摂理から、その8組の内の半分、つまり4組からは男の子が生まれ、この4組はそこで終わります。あとの4組は女の子で、次ぎを産みます。またその4組の半分の2組は男の子でそこで終わり、残りの2組は女の子で、また次ぎを産みます。その2組の半分の1組は男の子になり、残りの1組は女の子になります。 これが、説明1の図です。この8組でもうけた男女それぞれの子供の合計数は7人で、結果は同じになることがわかります。 さて、当設問の背景は、これを確率の問題としてとらえるのかどうか。その場合、無限級数の和の問題になるが、それをどう解くか。あるいは、生まれてくる実際の人数に着目して解くのか。いずれの場合も、面接の場でスムーズな解法のできる柔軟な頭脳の持ち主かどうか、また解法のスピードも見ようとしているものです。この問題はグーグル社の出題ですが、スピード解法という点や着眼点という観点から、難しい解き方をするよりも易しい解き方をする応募者のほうを歓迎したのではないでしょうか。 それでは設問98の解答です。 |
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では、その出題背景を考えながら、次の設問を考えてみてください。 |
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ビル・ゲイツの出題問題に関しては、HOW WOULD YOU MOVE MOUNT FUJI ? (Microsoft’s cult
of the puzzle. How the world’s smartest companies select the most
creative thinkers. )By William Poundstore の原書や、筆者の海外における友人たちの情報を参考にしています。 また連絡先不明などにより、直接ご連絡の取れなかった一部メディア媒体からの引用画像につきましては、当欄上をお借りしてお許しをいただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
執筆者紹介
テレビ出演と取材(NHKクローズアップ現代、フジテレビ、テレビ朝日、スカパー)
出版
連載
新聞、雑誌インタビュー 多数
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